第九章
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「本当にね」
「そうだよね、本来はね」
「聞けば聞く程」
「じゃあ僕の誕生日にはビーフシチューかな」
ウィリアムはここで話題を変えてきた。
「それかな」
「それだけじゃないわね」
「後は?」
「今から調べてね」
そうしてだというのだ。
「メニュー考えるから」
「そう、じゃあ楽しみにしておくからね」
「そうしておいてね。それでね」
有紗は話題を変えた、今度の話題は。
その手に今も持っているライオンと虎のぬいぐるみ、それに彼の傷だらけの手も見てだ、やれやれといった笑顔でこう言ったのである。
「全くね」
「全くって?」
「無茶するんだから」
「だから別にね」
「ウィリアムがそう思っていてもね」
実際は、というのだ。
「違うから」
「そうなんだ」
「そうよ」
こう言うのだ。
「無茶ばかりしてるから」
「僕立ち止まるとかね」
そういうのは、というのだ。彼も。
「苦手だしね」
「ほら、だからよ」
「僕は無茶をしてるっていうんだ」
「そうよ」
まさにその通りだとだ、有紗も言葉を返す。913
「その通りよ」
「無茶かな」
「無茶よ、けれどね」
優しい笑みだった、有紗はその笑みでウィリアムにこう言った。
「私ウィリアムがそうした性格じゃなかったらね」
「駄目だったんだ」
「そうしたウィリアムだからいいのよ」
そうだというのだ、そのうえで言うことは。
「これからも宜しくね」
「うん、それじゃあね」
ウィリアムも有紗に応える、そうして二人で腕を組んで歩いた。有紗はその腕から彼の温かさというよりは熱さを感じて心の中でも笑顔になるのだった。
馬鹿でもいい 完
2013・7・29
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