酒宴にて、彼と彼女は
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挑発した。結果は引き分け、実に見事なモノだった。
終わった後、彼の表情は急に代わり、男らしくなった。
兵が死なないために一緒に強くなろうという彼は少し変だった。しかしその力量と心持ちに真名を許してもいいと思えた。
興味本位と立場上、彼と共にいる事が多くなり、お互いの本質が似ている事に気が付いた。
そしてあの初戦。私は彼の弱さを見た。
きっと私と雛里しか知らない彼の本当の姿。
今はもう見せてはくれないのだろう。私には見せてくれてもいいのに。
そうした思考の果てに、自分の一つの感情が心を支配した。
「秋斗殿、何か思う事があるのなら聞きましょう」
支えたい、少しでも。話してくれないのなら今回はこちらから譲歩しよう。
「……星にも敵わないなぁ」
苦笑しながらの呟きは誰を思っての事なのか。どうせ我が恋敵であろう事は分かりきっているが。
一つ大きく深呼吸をして彼は話し出した。
「もう戦の話はしたくなかったが聞いてくれ」
あくまで自分の事は話さないのか。少し呆れたがコクリと頷いて先を促す。
「内政干渉になるから一人言、とでもしておいて欲しい。白蓮には曹操と盟を結ぶ事を勧めたい。今後の為に」
袁紹対策の一環であることはすぐに分かった。しかしあの曹操が簡単に応じてくれるとは思わない。
「……まあ、お前達で煮詰めてくれたらいい。あと……牡丹と星が心配だ。特にあいつは今回の俺と同じような事をしそうだ」
最悪の結末を予想しての事。きっとあれならする、間違いなく。私も当然する。それが武人というモノだ。
「ですが牡丹も私も武人、戦場で死ぬ覚悟などとっくに出来ているのは分かるでしょう?」
「……そうだな。悪かった、覚悟を貶めて」
素直に謝る彼に少し違和感を感じる。何に、とは明確なモノは見えない。
「クク、自分がしたのに心配するとは……あなたはまっことおかしな人だ」
彼の優しさなのだろう。ああ、私達も同じように想われているのだ。
「ホントにな。だけどさ、友を心配するのは当たり前じゃないか」
「ありがとう、秋斗殿。必ず皆で生き残ってみせます故、安心して下され」
大丈夫、きっとうまくいく。いや、共に戦えない彼の想いも胸に、私が守りきってみせよう。
「さて、そろそろ自分の陣に戻るよ」
「おや? このような絶世の美女と酒を飲める機会などあまりありませんぞ。愛紗のような堅物では話もままなりますまい」
もう少しだけ一緒に居たくて、わがままを言ってみる。
「確かにまだ飲みたいのはあるんだが……」
悩んだ末、彼の返答は否になるだろう。もう少し……わがままを言ってみよう。
「なんと、美女からの誘いを断るおつもりか。普通なら閨に誘うくらいしてもよろしいでしょうに」
そうなったらどれほど嬉しい事か。戦後にこの
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