酒宴にて、彼と彼女は
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胸を強調して、こちらもちらと伺ってから星が言う。おい、それは私に対しての嫌がらせも込めて言ってるんじゃないのか?
「胸の大きさは関係ないでしょう!? もう! 星はいつも意地悪です! 白蓮様ぁ、胸が小さくたって大丈夫ですよね……」
「一緒にするな。私にだって……少しはあるんだ……」
くそ、自分で言って嫌になるぞ。
「星、お前に教えてやろう。貧乳はな、希少価値なんだ。それに大きい胸は夢が詰まっているが、小さな胸は夢を与えているんだ」
秋斗がいつになく真剣な表情でふざけた事を語り、星と牡丹はじとっと睨んだ。対して私はなるほど、と変に納得してしまった。
「……そんな白い目で見るなよ」
「まあ、あなたの愛しの雛里を見ればわかっていた事ですがさすがに……」
「変態ですね。お前に近づいたら危ないと言う事がよくわかりました」
口々にけなすと秋斗がみるみる落ち込んで行く。助け舟を出しておくか。
「そう言ってやるな。秋斗は胸の大きさで女を見るような奴じゃないのは知ってるだろう?」
「……冗談ですよ」
絶対に本音も混じってただろお前ら。
皆はそのまま緩い空気を壊さぬように談笑を続ける。先ほどの話も一旦終わったと言う事。ここよりは友によるただの酒宴。
戦の後は生きている事に感謝して笑わなければならない。
生き残った事を実感するために。
殺してしまった敵に対して。
死なせてしまった兵に対して。
それが自分達がしなければいけない事なのだから。
私達は皆それをよく分かっている。
ひとしきり笑いあい、酔っ払うと、私はいつの間にか眠りこけていた。
†
酔い潰れた牡丹と白蓮殿を寝台に寝かせ、二人で酒を嗜んでいた。
先ほどまでの喧騒とは打って変わった静かな空間。私はこのような酒の楽しみ方も好きだ。きっと秋斗殿も。
目を合わせず、語らうこともせず、時たま聞こえるコクリという嚥下の音が今はただ愛おしい。
ちらりと彼を覗き見るとその瞳はあらゆる感情が渦巻いていた。
何故そのような眼をしておられるのか。
口に出す事は簡単だが、この空間を壊す事が億劫でする気になれなかった。
今度はじっと見つめてみる。
気付いて欲しくて。
あなたの事が心配だ、あなたの事を教えて欲しい、私の事も見て欲しい、私の想いを……。
こちらに気付いた彼はふっと微笑みを零す。しかし何も言ってはくれない。
彼は私と同じような人だ。
最初に出会った時は不愉快だった。
武人としての力量はその体運びからも見てとれた。なのにその武に誇りも持たず、自身無さげに弱々しく兵に指示するだけ。愛紗と同等とはいかずともそれに近いと見て取れたのに試合の申し込みにも逃げ腰。
私は愛紗の武を貶める彼が許せなかった。そして抑えきれず彼を
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