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乱世の確率事象改変
月詠に願いを憶う
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 桃香様に言われてそれぞれが己がすべきことのために動き出した。
 私は朱里ちゃんと共に陣内の兵に指示を出し、ある程度こなしてから秋斗さんの指示通りに董卓さん達の様子を見にやってきていた。
 天幕の外で聞き耳を立てると中からは話し声が聞こえる。
 ひそひそと話すその声はよく聞き取れなかったが、あまり時間を掛けるわけにもいかないので中に入る事にした。
「す、すみません。もう入ってもよろしいでしょうか?」
 私が声を掛けると少し人が動く気配を感じる。
「はい。大丈夫です」
 董卓さんの静かな返事を聞いてから中に入った。
 二人が泣いていたのは涙の後から分かり、しかしその表情はどこかすっきりとしたものだった。
「お気分は……いかがでしょうか?」
「私はもう大丈夫ですよ」
「ボクも問題ないわ。もう落ち着いた。心配してくれてありがとう。……あんた一人なの?」
 しっかりとした口調で二人は私の問いに答え、最後に賈駆さんが少し意外そうな顔をしてこちらが一人で来たことを尋ねて来た。
「はい」
「……ボク達があんたに乱暴するとは考えないわけ?」
 訝しげに尋ねる様子は何か裏がないのかと勘ぐっているのかもしれない。
「そうですね。しかし軍師であった賈駆さんならそれがどのような事態を招くか予想できると思いましたので」
 乱暴をしても不利にしかならない。自分達の首を絞めるだけなのだから。董卓さんのためを考える賈駆さんはそんな事しないと確信している。
「ボクの失言だったわ。ごめん。さすがは噂に名高い鳳雛ね」
 謝り私を認めてくれる。都で董卓さんを守りながら連合との戦いを描いていたこの人のほうが凄いのに。
「い、いえ。賈駆さんの方こそすごいでし、あわわ……」
 また照れて噛んでしまった。直そうと思ってもいつまでも直らないなぁ。
「……月、この子すっごく抱きしめたいんだけど」
「だ、だめだよ詠ちゃん。……でも確かに私も抱きしめたいかも」
 私が噛んだのを聞いて二人は何やらこそこそと内緒話をしている。恥ずかしい。
「その……お二人に確認します。これからあなた方はどうしたいですか?」
 内緒話を続けていた二人に質問を投げる。まずここから聞いておかないと。私達からの押しつけでは納得できない事が多くなるだろうし。
「……鳳統さん。二人で話あったんですが……もしよろしければ侍女として置いて頂けませんか?」
 董卓さんからの提案に驚きながらも私は少し思考する事にした。
 侍女なら確かに他の目も欺ける。生活の心配もしないでいい。それに賈駆さんや董卓さんからいろいろと学ぶこともできるかもしれない。
「ボク達は涼州へ戻っても家族や民達に迷惑をかけるだけ。かといってどこの街にも行くあては無いのよ。勝手を言ってるのはわかってるわ」
「それに私達は
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