月詠に願いを憶う
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「ひ、雛里でしゅ」
ああ、やっぱり雛里ちゃんかわいい。朱里ちゃんもかわいいけどおどおどしてる雛里ちゃんの方に目が行ってしまう。後で抱きしめてもいいか聞いてみよう。
「私の真名は月です」
「ボクは詠。それと……厚かましいお願いかもしれないけどボク達二人は基本的にこいつの侍女としてつけて欲しい」
詠ちゃんの提案を聞いた秋斗さんは変な顔になり戸惑っている。朱里ちゃんは目の色が昏く落ち込み、雛里ちゃんは少しだけ不機嫌になった。
「……秋斗さんは小さい子に好かれるね。いいよ、秋斗さんも小さい子好きみたいだし」
「なっ……違うわよ! そういう意味じゃない! こいつの侍女としておいて貰った方が自然だからよ!」
ほへーとした顔で桃香さんが言うと詠ちゃんが必死に反論を行う。
「おい、桃香。それは俺がロリk……幼女趣味だとでも言いたいのか?」
ろり? 何を言おうとしたんだろうか。
確かにさっきの反応を見ると朱里ちゃんや雛里ちゃんから好かれてそうだけど。彼は危ない人じゃない……と思う。
「……えへ」
「……はぁ、どうせ俺が否定してもお前の見解は何も変わらないんだろう?」
「うん。でも少し違うのも知ってるよ。秋斗さんはなんていうか……皆のお兄さんって感じだから」
もう天幕内の空気は真剣さのかけらも無くなってしまった。緩い雰囲気が全体を包み、誰もが冗談を言い合えるようになった。
「とりあえず二人の事は決まったか。桃香、すまないが俺は白蓮と約束があってあいつの陣に行ってくる。叱られてくるよ」
苦笑しながら楽しそうに言う彼の顔はきっと嘘。でも私と詠ちゃんしかそこに隠された事を知らない。きっと三人にはまだ言わないつもりなんだ。
「分かった。行ってらっしゃい」
コクリと頷いて桃香さんに返すと彼は天幕を出て行った。
その後、いろいろと細かい事を説明され、自身にあてがわれた天幕へと連れられた。
ふう、と一つ息をついてそれぞれの寝台に腰を下ろす。
「ねえ、月。きっとあいつはそのうち壊れるわよ」
唐突に語られた言葉は彼のこれからを予想しての事。
「あんなに耐えてまでどうしてこの軍にいるんだろうね。悪い事を企んでるわけじゃ無いと思うけど……」
自分で考えても答えは出なかった。詠ちゃんも同じようで難しい顔をしながら唸ってる。
「詠ちゃん。きっとあの人がここにいるのも、私達が助けられたのも、全部天命なんだよ」
私がそう言うと詠ちゃんは不思議そうな顔をした。
「あいつと出会ったのが天命?」
「きっとね、私達にはまだ生きてやる事がある。あの人にもここでやる事がある。そういう事」
天から私に与えられた役目はなんだろうか。ただ生きる事に耐えられなくて誰かのために死んでしまう事を望んだ私に出来る事はなんなのか。
「……
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