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乱世の確率事象改変
月詠に願いを憶う
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いてから。
 だが他人に事実として告げられると余計に心が重くなった。見せるな。これは俺だけが背負うモノだ。
「……分かってる」
 込み上げる吐き気を抑え付けて無表情でどうにか言葉を紡ぐ。
 分かってるよ。俺は友を見捨てる最低な奴だ。未来を知ってるくせにあいつらを救おうとしないクズだから。
 董卓の時とは違う。分かっていて助けないんだ。これは王の決断と同じなんだ。ずっと前から心に決めていた。桃香に強いているくせに自分が出来ないとは言わせない。
 ふいに董卓が立ち上がり椅子に座る俺の隣に来て……ゆっくりと抱きしめられた。



「徐晃さん、そんなに一人で溜め込んではだめですよ? 友達を切り捨てる事は確かに最低でしょう。でもあなたは精一杯救おうとしているじゃないですか。王というのは大切なモノも、自国の民も両方大事でないと務まりません。それに私達の時とその事は違うのですから気に病む事は無いんです。あなたは正しい判断をしてますよ」
 彼の瞳が悲しみに沈み込んで行くのが見ていられなくて、まだ起こってもいない事なのに心を砕いている姿があまりに小さくて、私は思わず抱きしめてしまった。
 そんな私を見た詠ちゃんは少しむっとしたがゆっくりと瞼を閉じ、口を開いた。
「あんた優しすぎるわ。多分ずっと予測していながら今まで黙ってたんでしょうけど、それは一人で抱え込むモノじゃない。まあこの軍じゃ仕方ないか」
 呆れた、というふうに肩を竦める。詠ちゃんもきっと同じ気持ちだ。
「後ね、考えが甘いわよ。盟を結べたとして公孫賛が先に攻めればいいけど後手に回れば曹操は何もしないわ。結局注意を喚起するくらいにしておいて、後は今後の様子を見ながら自分たちで対応していくしか手がないわ」
 言われて私も気付く。確かに曹操さんは空き巣を行うような事はしないだろう。あの人は正々堂々と敵を打倒することを好む。利が大きいなら盟を結び助けるだろうけど……難しいと思う。
 ふと気づくと私の手は彼の頭を撫でていた。
「っていうか月! いつまで抱きついてんの!? しかも頭まで撫でて!」
「あ! ご、ごめんなさい!」
 ぱっと離れて恥ずかしくてわたわたと手を振ってしまう。彼の瞳は少しだけ穏やかになったように見えた。
「あはは! ありがとう、二人とも。助かったよ。それとごめんな、もう戦場から離れた二人にこんな話して」
 不機嫌な顔で睨んでる詠ちゃんに向かって彼は言葉を紡いだ。私は頬が熱くて手を当てて冷まそうとしたけどあまり意味はなかった。
「ふふ、確かに変ね。もう軍師じゃないのにこんな話して。……徐晃、あんたがどんな奴かはよくわかったわ」
 苦笑した後に真剣な顔になり、その瞳の中には憎しみのかけらも無かった。
「そこまで、友達を切り捨てる覚悟まで持って大陸の平穏を考えてるあ
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