月詠に願いを憶う
[3/10]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
」
あったかい。鼓動が重なる。心に落ちた鉄の塊がゆっくりと溶けて自分に染み込んで行く。
背中を撫でてくれる手は優しくて
温もりをくれる身体は暖かくて
私も支えられている事を確認できて
涙は自然と止まっていた。
先ほどの内容と自分の気持ちをゆっくりと話すと彼は少し考えて、もう大丈夫だなと言うように私の頭を軽く撫で、桃香様を呼んでくるように言った。
多くを語らないのは私のため。私が自分で背負えるようにと。
一人一人が同じモノを背負って、それから支え合えるようにということ。
私はまた一つ強くなれた気がした。
†
鳳統が少し泣きそうになりながら出て行った後に少し先ほどまでの事を思い出す事にした。
ボクはしばらく月と泣き続けて、少しすっきりしたからか頭が軍師の思考を開始した。
この先どうするか、月がどうしたいか。
月に確認するとこの先の世界が作られるのを近くで見届けて責を少しでも果たしたい、との事。まさしく月らしい答えだった。
ただその後に、
「詠ちゃん。この先もしかしたら徐晃さんはこの軍から居なくなるかもしれない。私はその時、徐晃さんに付いていこうと思うの」
そんな事を言った。どうして、と聞くと、
「あの人が居ないなら、ここに居ても意味がないよ」
なんて他の誰かが聞いたら少し勘違いされそうな事を口にした。
でもその真意は理解できた。
徐晃がいない劉備軍では本当の平穏なんか手に入らない。乱世を生き抜くには甘すぎる。あいつがいなければ群雄割拠を生き抜いての大陸統一という考えには至らないだろう。
この乱れた世の事は負けたボク達が一番理解していると思う。本当なら劉備に食って掛かりたい所だけど……ボク達はもうそれを出来る立場では無い。
最後まで生き抜く事を決めた以上はその可能性を下げる事をしたくない。何より軍内に不和をもたらすような発言をすればあいつに切り捨てられる事が予想できる。
でも……あいつは、徐晃は異常だ。
劉備の甘い思想に染まらずにただ一人現実と未来を見据えている。
ほぼ最初期から近くにいるくせにこれといって影響されていない。そして何よりも内部で行っている事がおかしい。
悪く言えば月が傀儡にされたように、劉備を傀儡にして軍を動かしている。
良く言えば馬騰や孫策と同じように後継を成長させているともいえる。
でもそんなめんどくさい事をする利はなんなのだろうか。大陸を統一するのが目的なら野心家で実力もある曹操の所にでも行けばいいのに。袁家さえいなくなれば今の大陸で一番輝くのはあの女なのだから。
きっとあの女の目指すモノは自身による大陸の平定、支配。それに曹操自身も徐晃ほどの将ならば喉から手が出るくらい欲しいはず。
「失礼するよ」
思考を繰り返し
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ