雛が見つけた境界線
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にやつく秋斗の顔を見ると戦場で見たモノが嘘だったかのよう。
もしかしたら私が心配していた事は解決したのか?
喧嘩になっても本心でぶつかり合い、間違いを指摘し、分かり合う事。こいつらは皆優しいから強く言う事なんかできないだろうし。
まあ誰にでも気を使う秋斗の事だ。戦が終わるのを待っていたって所か。
「やられたよ、秋斗。まさかここでこのお茶を飲むと思わなかった。……さて、桃香と二人で話がしたいんだけどいいかな?」
軽口を返しながら見ると嬉しそうに頷いた。それを見てから桃香に話を振る。
「へ? 私と二人で? どうしたの白蓮ちゃん」
ほわーとした顔で聞き返す桃香に少し呆れてため息が漏れる。
「ちょっとした話だよ」
「話もある程度終わったしいいんじゃないか?そろそろ俺の天幕にも用事があるし。何よりまだ洛陽に兵を残してあるだろう?」
秋斗の言葉に桃香はハッとした顔をして慌て始めた。
「そ、そうだった! 皆、申し訳ないけど動いてくれる!?」
桃香のお願いに皆が慌てて動き始めた。秋斗は何やら鳳統に指示している。
「秋斗、お前は少し陣の外に行ってくれないか? 星がいるから」
それだけで何が言いたいのか分かったのかばつが悪そうに了解、と返事をしてすごすごと天幕を出て行った。
静かになった天幕の空気はお茶のせいか穏やかなモノに感じた。
「それで……話って何かな、白蓮ちゃん?」
不安そうに聞く桃香はあの頃と何も変わっていないように見えた。でも纏う空気が違う。一本芯が通っている。
「……秋斗に無理をさせたのと今回の戦の参加理由を叱りに来た。まず確認したい。誰が無理をさせる事を献策したんだ?」
「それは……秋斗さん自身が献策してくれたの」
その言葉に自分の思考が固まる。
あいつが自分で申し出た? バカな、ならどうしてあんな痛々しい顔をする。疑問だらけの思考を抑え付け、私は次の質問をぶつけた。
「……止めなかった理由は?」
「私達が……未熟だったから。参加した責任を果たして、民を救うのにはそれしか無くて――――」
「バカかお前は! そういう時は殴ってでも止めろ! お前が参加を決めた理由のためだけで有能な将を一人失う所だったんだぞ!? あいつがいればこれから先、どれだけの人を救えると思っているんだ! 責任を果たすよりも大切なことだろう!?」
桃香の返答にもはや自分を抑える事は出来ず、声を荒げて言葉を並べ立てた。
しかし、自分で献策したなら秋斗はどうしてあんな顔で戦場に向かったんだ。
どうして今はいつも通りに戻っているんだ。あいつは何を抱えているんだ。
「お前の目指してるモノは分かってる! だけどもっと長い目で見ろ!」
「……ごめん……なさい……」
こいつは何にもわかっちゃいない。自分がどれだけの存在
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