雛が見つけた境界線
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る覚悟を持たなければならない。力が無ければ話し合いも何もないんだよ。もう皆、虎牢関で気付いてただろう?」
秋斗さんの発言に皆が一様に頷いた。
「納得できないよ、こんなモノは。乱世なんて矛盾の塊で、正義の押し付け合いで、理不尽しか無い。それでも誰かを救いたいから、何かを犠牲にしながらも進むしかない」
私達にそれができるか?
きっとそういう事。後はそれぞれで納得のいく答えを見つけるしかない。
「お姉ちゃん、お兄ちゃんは……悪い奴じゃないのか?」
まだぐずっている鈴々ちゃんが桃香様の腕の中で見上げながら言う。
「そうだよ。鈴々ちゃんの知ってる秋斗さんだから悪くなんかないよ」
その言葉を聞くと鈴々ちゃんの表情がぱあっと明るくなり、秋斗さんの元に走っていき抱きついた。
「えへへ、なら問題ないのだ」
笑顔で言う鈴々ちゃんの頭を優しく撫でる秋斗さんはありがとうと微笑んで答えたが、自分の椅子に座るように促して、鈴々ちゃんが戻ると真剣な表情になった。
「現実を知った。憎しみを受けた。理不尽も行った。間違った選択もした。その上でお前に聞こう。お前は何を目指す、桃香?」
見つめる両者の瞳には覚悟が燃えている。
それを見て私は気付いた。
この二人はそれぞれが王なんだ。どちらも同じ世界を描いて、どちらも民のために乱世で戦う覚悟を決めている。乱世を生き抜いて大陸に平和をもたらす事を目指している。
ただ、秋斗さんは桃香様よりも先を行っている。この方はどうして代わりに立とうと……そうか、途中で成長したんだ。桃香様を追い抜くほどに。理想の矛盾に気付いていたからこそ。
同じ世界を願うからこの軍にいる。そして一番効率的だから代わりに立とうなんて考えない。桃香様が成長するのを見守り、促し、導いている。それを強いてしまったのは……私だ。
その考えに行き着いて後悔が心を襲う。同時に嬉しさが込み上げる。私は二人も王を掲げられる、と。
「私は争いの無い優しい世界を目指します。そして誰もが笑って暮らせる世を作るために戦います。虎牢関の言の通りです。必要ならば力を使う事もためらいません。守る為に。
力をもって対等の立場の人たちに話し合いの机に座って貰い、最小限の戦で手を繋いでみせます。同じように平和を願う人たちとも手を繋いで。そうすれば今を生きる人に余計な犠牲を出さなくて済みますから。
そのために……秋斗さんに力を貸してほしいです」
すっと頭を下げて助力を願う。桃香様も秋斗さんがどういう存在なのか気付いてるんじゃないだろうか。
桃香様が作りたい世界。優しい世界。私達が手を繋げる事を示せば世界は平和になるから、ということ。私はそのために自分の全てを使って見せる。
秋斗さんは目を瞑り、やれやれというように首を振った後、ゆっくりと話し出
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