Introduction
第十一話 紫苑と紫音
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と思うけど、やっぱり心の底では大きな存在だったんじゃないかしら? それにお父さんのことも……。泣けるときに泣いておきなさい、でないと……辛いわよ」
「う……ぁ……あぁぁ」
自分が泣いていると自覚した瞬間、一気に感情が溢れてきた。僕は悲しかったんだ、でもそれに気付かなかった。決して姉のことは好きではなかったけど、いなくなって悲しいと思える存在だった。それが嬉しい反面、手遅れであることが余計に絶望感を掻きたてる。もっと彼女と話していればよかった、そんな後悔が止めどなく押し寄せてくる。それに耐えきれずに僕は崩れ落ち、声を出して泣き続けた。いつの間にか近くで支えてくれた楯無さんに縋りつきながら。
どれくらい時間が経ったのだろう。しばらく楯無さんに付き添われて泣き続けた僕は、少しずつ気分が落ち着いてくると、楯無さんの腕に覆われている自身の現状に気づき慌てて離れた。それを見た楯無さんは苦笑しながらその場を静かに離れる。近くの椅子に座って放心していると、楯無さんがコーヒーを入れて戻ってくる。
「落ち着いたかしら?」
「あ、あの。……ごめん。あと、ありがとう」
なんとなくさっきまでの状況を思い出して気恥ずかしくなり、謝ってしまう。そんな僕の様子を見て再び楯無さんは笑みを浮かべる。
「ふふ、なら出世払いね、働いて返してちょうだい。私の胸で泣いた人間なんて数えるほどしかいないんだから、高いわよ?」
落ち着いた僕に安堵したのか、楯無さんは少し茶化しながらそう言ってくれた。その中に彼女の気遣いのようなものが見えて嬉しくなる。
「それは……大変だね。学園から離れられない理由が増えちゃった」
学園を辞めて西園寺に逆らっても、今の僕には何もなくなるだけだ。なら、少なからず居場所のあるこの学園生活を続けるのも悪くない。いや、誤魔化すのはやめよう、僕はまだこの学園に居続けたい。自分を偽り、過ごした時間は短いけれどそう思えるようになった。
「ん、紫音どうしたんスか? なんか元気ないッスよ」
楯無さんと話して少しだけ気持ちの整理がついたあと、とても寝る気分にはなれなかったので楯無さんと食堂に向かった。そこでフォルテさんとフィーさんにも会ったので一緒に朝食をということになったんだけど……。
「そ、そうですか?」
自分では大分気分は落ち着いたと思ったけど表情にでも出ていたのかな。それともフォルテさんが鋭いのか。弟が死んだ、という対外的な事実になる話をすればいいんだろうけど……気分的に避けたいしこれからの事がハッキリ決まってない以上それを言っていいのかも微妙だ。
「ん〜? なんかいつもと様子が違う気がするッス。あ、もしかして紫音も昨日の虚先輩の料理食べ過ぎてお腹壊したんスか!? いや〜、ウ
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