一人月を背負う
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私達は正義だったはず。私達が正しかったはず。
間違ったことなんて無かった。選択は全て上手く行っていた。
きっとあの人は嘘をついているんだ。だって董卓さんは死んだっていってたから。
偽物だから嘘をついているんだ。きっと、いや、絶対そうに違いない。
「じゃあどうして秋斗さんは確信を持って私に話していたの?」
脳内の黒い自分が甘く囁く。
「本当は分かってるんでしょう?参加する前に自分でも言ったんだから。諸侯の嫉妬が理由だって。」
違う。
「私の嫌いな田豊さんと張コウさんは桃香様に現実を見ろと言ったでしょう?」
違う。
「あの優しい人は最初から自分達の愚かしさに気付いていた。でも止めなかった。私達が否定することを分かっていたから。」
違う。
「あの優しい人は戦前に不和が出るから今まで言わなかったんだよ? 自分達の軍の犠牲を減らす為に。桃香様が大陸に平穏を与える為にはこの戦の参加は絶対に必要だったから。」
違う。
「……否定しかしないならあの優しい人に置いていかれちゃうよ? 雛里ちゃんだけ連れて。……雛里ちゃんの方があの人にとって特別なのが羨ましいんでしょ? 今まで一番だったのにいいの?」
自分の考えに黒い感情が心を渦巻き叫びだしそうになる。どうにか堪えたが、歩いていた脚から力が抜けて崩れ落ちた。
「朱里ちゃん! しっかりして!」
大きな声が聴こえて顔を上げると涙を流す雛里ちゃんが居た。
いつから自分は取り乱していたのか、いつ秋斗さんの天幕を出ていたのか分からない。
周りを見ると陣の中だとすぐわかった。もうすぐそこに私達の天幕がある。
「どうしたのだ朱里!?」
民達の元から帰ってきたのか遠くから鈴々ちゃんの声が聞こえた。
後ろには桃香様と愛紗さんが続いている。
三人が近づく前に雛里ちゃんが耳元で囁く。
「朱里ちゃん、桃香様達にはまだ内緒にして。秋斗さんは被害者の二人から桃香様達に直接現実を聞かせるつもりだと思う」
「雛里ちゃんは……どうして取り乱して無いの? 私達は悪い事をしたんだよ?」
私の言葉に少し哀しそうな顔をして静かに呟く。
「人を死なせてる私達に良いも悪いも無いよ、朱里ちゃん。」
頭の中で反芻し、奥深くまで浸透した雛里ちゃんの呟きは、私の心を捉えて離さなかった。
†
陣に戻ると朱里と雛里が外にいた。
雛里が滅多に出さないような大きな声で朱里に呼びかけていたので走って近づくと、彼女は朱里に何か呟き、それ以降朱里は話しかけても何も答えなくなった。
とりあえず桃香様の天幕に連れて行き何があったのかと聞いても二人とも何も答えない。
「二人とも……お願い。何があったのか教えて?」
桃香様の必死の懇
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