一人月を背負う
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「……言っておくが彼女らはこの戦の重要参考人だ。他の徐晃隊を後五人呼び、中の声が聞き取れない距離で俺の天幕を守り、見張れ。『上位命令』だ」
声を抑えて徐晃隊の一人に伝えると厳しい表情になりすぐに行動を開始した。
「とりあえず入ろうか。詳しい事は中で説明する。朱里は帰ってくる前の洛陽内の様子も教えてくれ」
首を傾げていた二人に話して俺達は天幕内に入った。
†
目を開けるとそこは知らない場所だった。細めた目で白い天井を見つめていると、横からこそこそと話す人の声が耳に入る。
「董卓と賈駆が……死んだ?」
「はい、帰ってくる途中に報告を聞いたのですが、隠れ屋敷にて自害している所を袁紹軍の将、顔良が発見したとのことです」
耳に入ってきた会話に驚き、起きていることが気付かれないようにすっと目を閉じて耳を澄ませる事にした。
私が……死んだ? こうしてちゃんと生きてるのに。
詠ちゃんと二人で話をしていて何かを刺されて……
そこまで考えて全てが繋がった。
私は……生かされたのか。じゃあ詠ちゃんはどうなったんだろう。
「……朱里、雛里、この子達は董卓軍の別の軍師か文官だと思う。二人を分けて話を聞き、正確な情報を得たいんだが尋問できるか?」
軍師か文官二人ということは詠ちゃんも一緒なんだ。
そのことに気付き思わず安堵し、少し大きく息をついてしまった。
「「「……」」」
男の人の声に返答は無く、周りに変な空気が流れている。
しまった。起きている事に気付かれたかもしれない。
「……起きてるんだな?」
男の人の発した言葉にじわと汗がにじみ出るが目を瞑り続ける。
大丈夫、騙し通してみせる。話を聞いてなかった振りをしないと。
幾分かの沈黙の後、隣で衣擦れの音が聞こえ、人が立つ気配がした。
「……尋問はやめだな。拷問にしよう。そうだな……こっちの眼鏡の方から――――」
「ダメです! 詠ちゃんは……詠ちゃんだけはやめてください! やるなら私……に……」
声を上げて飛び起きて周りを見ると目を丸くしている二人の可愛い女の子と立ち上がっている大きな男の人がいた。
あ……やってしまった。
「クク、冗談だ。騙してすまない。君たち二人に拷問なんて絶対にしないよ。だから安心して質問に答えて欲しい」
低い落ち着いた声で男の人は言い聞かせるように私に話し、微笑んで優しく頭を撫でてくれる。
撫でてくれる大きな手は少しくすぐったくて、でもどこか安心感を与えてくれた。
「へぅ……」
撫でられているのが恥ずかしくてついいつもの悪い口癖が出てしまった。
それでも誰も笑わずに微笑んだままこちらを見ている。女の子二人の雰囲気が少しだけ変わったけど。
その空気を感じ取ったのか少し苦笑して男の人は手を放し
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