彼の救い
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かさを持ち、決して投げ出したりせず、皆が助けるためという目的のために一つになっていた。
何をおいても民の為、か。
劉備が掲げる理想を思い出す。
私は今、そんな余裕があっただろうか。
思えば母様が死んでから、王になるために余りに多くのモノを捨ててきた。
力無き自分を憎み、力を求めやっきになって突っ走ってきた。
見回すとあの頃のような、守れなかった民達の住んでいた街がある。
気付くと拳を握りすぎて血が滴っている。
「雪蓮、無事だったか。良かった」
後ろから声を掛けられ振り返るとそこには心底安堵した顔の冥琳がいた。
「ねえ、冥琳。私達は弱いね」
零してしまっのは自分の弱さから。でも耐えきれなかった。
周りには自分の仲間しかいないから気が緩んだんだろうか。
「見慣れてるけどさ、やっぱり……」
「雪蓮、弱音など口にするな」
自分を見る目は軍師のモノ。そして……その奥には自分への変わらない信頼の色。
「お前は文台様の意思を継いだのだろう?ならば弱音など吐くな。お前の優しさは分かっているが……それは覇業の妨げになる場合がある」
厳しく諭してくれるのは自分を思っての事。そうする事で自分を支えてくれている。
「ごめん、冥琳」
「いいのよ、雪蓮。二人の時は言ってもいいから、ね?」
私はどれだけこの大切な人に世話になるのだろう。
強くなるのだろう、孫伯符。
そうやって自分を誇示し、心を奮い立たせる。
「ふふ、ありがと冥琳。じゃあ民達のために仮設天幕の準備と、炊き出しもしましょうか。未だ燃えている火の消火も。洛陽にしばらく留まっても……いいわよね?」
言うと彼女は一つため息を尽き額に手を当ててこちらを見る。
「計画に多少のズレができるが……この状況では仕方ないか」
冥琳の口元は言いながらも綻んでいた。
いつも支えてくれてありがとう、と心の中で呟いて、私達はそれぞれが出来る事を行いに兵に指示を出しに向かった。
†
戦は終わった。
投降する兵達の移動も終わり、私達は洛陽に入場した。
入るとあまりに酷い有様に言葉が出なかった。
戦の爪痕。焼け落ちた家。死んだ民や兵の死体。黄巾の時にも見てきたがいくら見ても慣れる事は無い。
「劉備様。民の避難、曹操軍と孫策軍の迅速な対応の助けもあり、終了しております」
先に入っていた徐晃隊の人が報告をしてくれる。
細かな報告を朱里ちゃんが聞いている。
「桃香様、いくつかの場所に分けて避難を行ってくれたようなので、私達は東側に向かいましょう。すみません、炊き出しと仮設天幕の準備を」
後ろに控える兵に指示を出すのを確認し、避難場所に向かう。
「朱里ちゃん、ここからが私にできる事、だね」
「はい。民達の元へ着いたらこちらに炊き
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