火燃ゆる都に月は沈む
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覚悟を決めている。
目の前でただ主のために従い戦う夏候惇の姿が華雄にダブり、シ水関での言葉が甦り自分の心の内側を覗き込む。
月の誇りを穢されて、最後まで戦えんで何が将や。
「惇ちゃん。最後に闘えるのがあんたでよかったわ。うちの欲も、誇りも、想いも、全部を掛けて戦えるんやから」
「ふはは! 最後とは言わず幾度となく掛かって来い! ……いやダメだ! お前は華琳様の元に来て貰う! それが華琳様の望みだからな!」
自分で言っておいて自分で突っ込む夏候惇の支離滅裂な発言に思わず吹き出してしまう。
「……あはは! うちあんたのそういうバカなとこ好きやわ惇ちゃん。でもなぁ……友達との約束があるさかい他のとこには行けへん!」
「バカとはなんだ! くそぅ……ならば動けなくして引きずってでも連れて行く! 負けたらいう事を聞いて貰うぞ張遼!」
そんな自分勝手な言葉を並べるところも華雄に被って見えてしまう。実力は夏候惇のほうがかなり上だが。
「姉者! 無事か!?」
急に聞こえた声にその方を見やると、どうやら噂に聞く夏侯淵までもが来たようだ。
「おお秋蘭! こいつが言う事を聞かんからぎったぎたにしてから連れて行く! もう少し待っていてくれ!」
自身に満ち溢れた声でさも当然のように彼女は妹に話す。
「そうか、ならば私は他の隊の援護をしよう。近くで待ってるぞ姉者」
そう言って周りの敗走を始めたり、未だに戦っている兵を矢で次々と射抜いていく夏侯淵。
「なんや簡単に言ってくれるけど……うちかて負けるつもりあらへんで!」
言い放って武器を構え直しあらん限りの闘気をぶつけると、夏候惇は不敵に笑い、喉を鳴らしながらこちらを強い眼光で見返してきた。
「くっくっ! それでこそ私も倒しがいがあるというものだ! さあ、来――――」
その時……どこからか飛んできた流れ矢が夏候惇の左目を射抜いた。
「ぐっ!」
「姉者ぁぁぁ!」
視線を蹲る夏候惇の方に向け、呻く彼女に近づいていく夏侯淵の声は絶望に染まっていた。
振り返り、確認するが乱戦状態になっている戦場では矢を放った弓兵は見つけられなかった。
「くっそぉぉぉ! 誰じゃい! うちの一騎打ちに水差しおったド阿呆は! 出てこんかい! 叩っ斬ったる!」
あまりの怒りに心が暴れる。ここで、夏候惇と心行くまで全力で戦い散ってこそ自分は満たされたのに。
華雄の想いに、月の誇りに、殉じる事が出来たというのに。
その戦いが穢された。
夏候惇の負傷にそこかしこで曹操軍の兵達に動揺が走り始めていた。
「姉者! 気をしっかり持て! 姉者ぁ!」
「ぐっぅぉおあああああ!」
大地を轟かせるかと思うほどの夏候惇の雄叫びに水を差した敵を探し当てるのを止めてそちらを見ると、驚くことに彼女は自分で目に刺
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