火燃ゆる都に月は沈む
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り倒し、追随する隊は押し広げる事もせずただ鋭く、突きだされた槍の如く戦場を駆け抜けて行く。
心に浮かぶは焦燥……ではなく歓喜と悲哀だった。
抑圧されていた自分の心は人を殺すことを喜んで、哀しんでいた。
愛紗や鈴々が戦っているのに自分はただ見ているだけ。そんな自分の無力さが歯がゆくて、何もできない時間が心を蝕んでいた。
生きている民を助けるために動けることが嬉しい。生きたいと望んでいた兵を殺すことが哀しい。
綯い交ぜになった心の内側とは裏腹に思考は戦いのみに集約されていく。
今はただ戦場で戦い、先の事は考えなくていい。それが自分にとって一番の安息だった。
門に近づくに連れて敵は増えたが何故か統率が全く取れていない。
目の前にいるのはただの烏合の衆。兵同士で動きが噛み合わず足を引っ張り合っている。
そのような部隊は自分達にとってはただの木偶でしかなく、簡単に突破する事ができる。
被害も軽微で城門まで到達し、愛馬月光の腹を蹴り、スピードを上げて兵の壁を突き破った。
抜けると目に移ったのは阿鼻叫喚の地獄絵図。
董卓軍は味方同士で殺し合い、街ではそこかしこで轟々と火が上がっており、民は逃げ惑い、逃げる兵とぶつかり怪我をする者も、殺される者も見えた。
もはやこれは戦ではない。自分の中で何かが弾けそうになったが、それを堪えて代わりに声を出す。
「偃月!」
自分が発した短い一言で、追随していた徐晃隊は戸惑いと恐怖に支配さればらばらと乱れ立っている敵を半月型に押し広げる。その間に大きな声で命を下す。
「第二部隊、洛陽内にて民を襲っているか、お前たちに歯向かう董卓軍を制圧しろ! 武器を捨てた者は放っておけ! 火は消せるなら出来る限り消せ! それと民を傷つける事は許さん! 一人でも多く助けろ! 突撃して抜けた後三人一組で散開!」
「応!」
兵ですら無くなったモノ達への憎悪に燃える徐晃隊の、重く叩きつけられるような声に目の前の敵は怯えて腰が引けたようで、逃げ出すものがちらほらと見えた。
二次被害を防ぐならば皆殺しが最善だが、桃香の先を考えると皆殺しには出来ない。例えそれが自分の兵も、民すらも危険に晒す事になろうと。矛盾に吐き気を堪えながら急ぎで次の指示を出す。
「副長は第一部隊と共に民の救援と……笛を使用し広い場所への逃げ惑う民の誘導も行え。誘導中に敵と判断した者は全て殺せ。第一の動きは全てお前の判断に任せる」
散開するにしても随時指示を出してくれるだろう。
「御意に」
俺の命令を聞いてすぐに近づく敵を蹴散らしながら去って行った。副長ならばやりきってくれる。徐晃隊だけでは危ういから城の制圧はいらない。
「残りはここで俺と共に戦う。城門前を広げろ」
言葉を放つと同時に自分も飛び出す。
長い剣の
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