火燃ゆる都に月は沈む
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いと……。
「ごめん……」
必死の形相で自分に向かい来ようとする元軍兵を止める兵士に聞こえるかも分からない呟きを一つ漏らし、月の隠れている所に向けて走り出す。
そうしてボクは戦場を逃げ出す卑怯者になった。
†
戦況は厳しく、しかしまだ続けられる状態だというのに煙が見えた。
上がっている場所は予定の場所ではなく、その数は十を超える。
思考を高速で回転させ予測を立てると一つの絶望に行き着いた。心が怒りに燃え、悔しさにのた打ち回り、それでも思考をどうにか繋ぐ。
自分達が助けに行くか。それともこの戦場を離脱するか。
城内にて逃げ場がなくなれば自分達はどうなる。敵兵がこぞって押しかけ、その場で乱戦になってしまうと洛陽の街はどうなる。民にも被害が増えるだけだ。
今は、こうなってしまったら……彼女達を信じるしかない。
「呂布隊、飛将軍に集え!」
自分の命令に隊の皆は応の一声と共にそれぞれ自分の掲げる将に向かい駆けだす。
自分は愛する人と友を天秤にかけた。
その上で何がなんでも逃げ切ると言った彼女の言を信じる事にした。
六対一でも戦っている飛将軍に呂布隊が突っ込んで行く。
近づく呂布隊を見て敵将達が即座に離れて大きな距離を取った。
「恋殿、逃げるのです。連合の非情な策によりもはや戦に勝ちは無く、城内に助けに行ったとてねね達も危ういのです。詠を……信じましょうぞ。」
こちらの言葉を聞いた彼女は絶望を瞳に宿らせ、いやいやと首を横に振る。
「聞き分けてくだされ! 自分も皆も、死んでしまっては意味がないのですよ!」
大きな声でそう言うと愛する人は口を横に結び必死に耐えながらも考えている。
「……ねね……逃げる」
慄く唇から漏れ出たのは苦渋の選択。涙を必死に堪えながら血を吐くように紡がれた。
「了解なのです。連合を出来る限り蹴散らして去るのですよ」
自分達にできるのはこれくらい。
「……霞は――――」
「霞は敵本陣に向かったかと。こちらは逆側を狙うのです。神速の張遼は助けよりも共に戦ってくれる事を願うのですから」
霞なら大丈夫だ。うまく逃げ切れる。あちらのほうが将も薄いし兵も少ないのだからこちらのほうを優先したい。
「……わかった。呂布隊、蹴散らせ」
全てを呑みこむような返答は空気を轟かせ敵兵を恐怖に染め上げる。
そして修羅の軍は蹂躙を開始した。
どうか皆が無事で再会できることを願って兵達と共に進んで行く。
†
あの人は朱里ちゃんには自分の考えの全てを話さなかった。
連合の策で洛陽に火が上がるというもう一つの可能性の話を。
自分達が悪を為す手伝いをしていたと知った桃香様や愛紗さん、朱里ちゃんの善に凝り固まった思想が崩れてしまい、どんな状態になるかあ
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