火燃ゆる都に月は沈む
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うに参加を決め、正義を語って現実を見ようともしない。
そんな所に少しでも関わるのは吐き気がした。
何故檄文が飛ばされてすぐにこちらに適当な理由をつけてでも挨拶に来なかった。
噂の真偽を確かめる為に使者を送ればよかったのに。
公孫賛は劉備と違う。あれは幽州を守る事が第一目的だから袁家からの侵略の理由づけを防ぐための参加だと容易に想像できる。
その理由に……ボク達がなってもいいのか。またボク達が誰かを巻き込んでいいんだろうか。
罪悪感からの思考に捉われ心が落ち込んで行く。
その時後ろから強い衝撃が襲い前のめりに倒れた。
「っ! ……何!?」
月は衝撃と同時に投げ出され、振り返るとそこにはにやにやと笑う男二人。
「……」
無言でこちらを見やる目には得物を見つけた肉食獣の如き獰猛な輝きが光っている。
「へへ……お前……賈駆だな? もう一人は知らねえなぁ。仲が良かった文官ってとこか」
いやらしい笑みを携えながら下卑た声で自分にゆっくりと近づきながら話す。
火を放ったのはこいつらか。
悲鳴を上げようとしたが口に手を入れられて身体が抑え込まれる。
「おっと、どうせここらにはもう誰もいねえが連合の奴らが来たらやっかいだ。おい、隔離場所に連れてくぞ」
精一杯もがいて抵抗するが力の無い自分はその腕から逃げ出せるわけも無い。
「ああ? こんな上玉すぐに連れてくのはもったいねぇよ。俺らが見つけたんだから最初くらいいいだろうが」
二人が話す内容は自分達がこれからされる事を表していた。
獣の欲望に蹂躙され、その後に生贄にされるという事。
「――――――っ!」
「ああ! うぜぇ! 静かにしやがれ!」
怒号と共に地面に引き倒され衝撃で頭を打った。
視界が霞み、思考が上手く回らない。
「ふう……まあそっちのだったらいいから楽しんでから来いよ。手早くな、殺してもいいぞ。俺は先に行くわ」
言うが早く自分は脇に抱えられる。
待って、ダメ、月は、月だけは止めて。
叫ぼうとしても声が出ずに口だけが無駄にパクパクと動いた。
「ふひひ、そうこなくっちゃよ! 誰もいねぇ民家に連れ込めばいいしな!」
自分達は……どうしてこんなにも運が無いのだろうか。
自分達が何をした。愛する人と仲間と共にただ幸せに生きていたかっただけなのに。
「――――――なの!」
絶望に包まれ、堕ちて行く意識の隅に、甲高い女の声が聞こえた気がした。
通路を通っていく最中に逃げ出す民が視界に映る。
その脇には民のモノとは思えない服装をした少女が抱えられていた。
急ぎで追いかけ始めるともう一人同じような格好をした少女を抱えた者が飛び出してきた。
瞬間の判断で足払いをかけて転ばせる。
「徐晃さん! ここは
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