火燃ゆる都に月は沈む
[2/12]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
りの兵達がざわめき出した。
「賈駆様! ら、洛陽から煙が!」
その言葉に振り返るとあちこちで煙が細く立ち上っている。
何故だ。戦況はまだ……厳しいが確定していない。
しかもボク自身が月の元に行くときに屋敷に火をと指示を出したはずだったのに。
まさか……弱気に走った者が裏切ったか。いや違う。これはボク達を貶めるための策略。
「慌てるな! 各部隊長に通達! 城壁内一割の兵は火消しに回れ! 急げ!」
即座に動いてはくれたものの、走り出す前に見えた困惑と焦りの混じった顔を思うと自分の指示をちゃんと完遂してくれるか信用しきれない。
この決戦で勝てたとしても洛陽の民から反感を買ってしまっては自分たちはここにはいられない。
迅速に火災に対処し、尚且つこの戦にも勝利しなければいけなくなってしまったからこその指示。
「何が起こってるんだ!?」
「洛陽内に敵が入ってきたのか!?」
「俺達はどうすればいいんだ!」
「こんな状況、負けじゃないか!」
待機している間も洛陽での長い戦闘により不満が溜まり士気が下がっていた兵達は混乱の渦に呑みこまれ始めていた。
部隊長達が黙らせようとするがその場に漂う空気は払拭しきる事など出来ない。
「落ち着け!」
自分も同じように何度も声を上げ、兵達を宥めようとするが近くにいる兵達しか言う事を聞かずそこかしこで統率が乱れ、ついに逃げ出す兵が表れだした。一人が逃げれば続いて二人、三人と。
それぞれの小隊の長が止めに入るがそれでも混乱は収まらない。逃げる兵を捕まえて留めようとしても反撃され、さらに混乱が広がっていく。切れてしまった糸はもう元には戻らなかった。
集団の心理掌握は出来ない。これでは兵の補充はままならず、すぐに敵が洛陽内に入ってきてしまう。
敗色に染まった軍はもはや烏合の衆ですらなく……ついに仲間同士での殺し合いにまで発展し始めた。
暴動が起こり、軍が変貌を遂げる。董卓が悪と言った連合の言のままに見えるだろう。
霞がいれば、恋がいれば……その圧倒的武力で兵達の心を掌握しきれただろう。
ねね操る呂布隊がいれば……乱れの無い統率によって暴動など起こる事も無かっただろう。
しかしここには力も無く、シ水関にも虎牢関にも向かわなかった自分がいるだけ。
兵の掌握の為の時間は政務と政略に捉われ、信頼も薄くなってしまった自分だけ。
連合に対抗するために急遽集めた新兵も多く混じってしまったのも理由の一つだろう。
「賈駆様、お逃げください!」
近衛兵達が暴動を止めに向かう中、一人の兵士が自分に向かって言い、その言葉にはっとする。
今ボクのするべき事はなんだ?
この状況では自分達の敗北が確定してしまったも同然。外の戦いも直に収束に向かうだろう。
月の所に向かわな
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ