第四十六話 少年期【29】
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生きしそうだしな。……えぇ、本当に。
「この子は自然保護区を見回っていた時に、たまたまリニスが見つけてくれた子なの。親とはぐれてしまって、かなり衰弱していたこの子を。……もう長くないって保護区の方にも言われたわ」
「それで…」
「えぇ。最初は迷ったけど、この子と目が合った時、生きたいって気持ちが伝わってきたの。それなら、1度仮契約をしてみましょうって」
この子が使い魔としてここにいるということは、もう本当に息を引き取る直前だったのだろう。使い魔技術は、命を助ける訳でも蘇らせる訳でもない。だけど、生前の記憶が少しなら残る可能性はあった。
「使い魔契約には成すべき目的を設定する必要がある。私は仮契約をして、保護区の方に預かってもらっていた日から、この子とたくさんお話をしたわ。そして、本契約の内容をこの子に伝えて……了承してくれた」
「使い魔契約には、契約と制約が必要だからか。母さんはなんて契約したんだ?」
「私が結んだ契約は、『私たちの家族として一緒に生きること』よ」
「この子と一緒に生きる…」
アリシアは母さんの言葉を繰り返し、静かに息を吐いた。そして、彼女は真っ直ぐに新しい家族を見つめる。その視線に最初は戸惑っていた少女も、真っ直ぐにアリシアを見つめ返す。
例えこの子が作られた存在であったとしても、新たな1つの命とこれからの運命を共にすることに変わりはない。何より、この子は新しい可能性だった。本来の歴史では、この子が生まれてくることはなかった。俺たちがいたから、アリシアが生きていたからこそ生まれてきてくれた子なんだ。
それは、俺たちが生きた証であり、新しく俺たちが生み出した命だった。
「……アリシア、しっかり挨拶をしよっか。俺たちの新しい家族に」
「うん」
俺とアリシアはゆっくりと距離を詰め、少女と同じ目線になるように合わせる。彼女は大きな目をぱちくりとしながら、じっと俺たちと目を合わせてくれた。
「俺はアルヴィン・テスタロッサ。テスタロッサ家の長男で、君のお兄ちゃんになるかな」
「私はアリシア・テスタロッサです。えっと、お、お姉ちゃんになります!」
「……にぃにと、ねぇね?」
ちょっ、幼女ににぃにとか羨まし……ぶげらッ!
今すごくいいところなんだから黙りなさい!
クイント。いつの間にサマーソルトを…。
「……あっちの方は全然気にしなくていいからね。これからよろしくな」
「よろしくね!」
「……うん」
******
「そう言えば母さん、この子の名前は?」
「名前はみんなで決めようと思っていたから、まだなのよ」
「そうなの?」
プレゼントでもらったシュシュを、うさぎっ娘の耳につけていたアリシア。彼女が母さんの言葉
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