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真・恋姫†無双~現代若人の歩み、佇み~
第三章:蒼天は黄巾を平らげること その5
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る。彼女が疑問の声を漏らす前に、ついに関羽が怒声を放った。

「曹操殿!私は劉玄徳の義姉妹にして天の御遣いに忠義を捧げた武士だ!いかなる言葉を掛けられたとしてもこれを覆す事は罷りならん!あなたの要求は絶対に飲めない!」
「なっ!き、貴様ぁっ!華琳様の御言葉を断るとはどういう了見ーーー」
「はいはい、姉者。ちょっと落ち着け」「そうですよ、春蘭さん。っていうかちょっとは力緩めて。腕が攣ります」

 沸騰したように怒る夏候惇の右腕を夏候淵は片手で制し、左手に仁ノ助は両腕を絡ませて、かつ引き摺られるように彼の靴底がずずずと地面を滑っていた。夏候惇が力を抑えるような器用な真似をするわけがない。片手だけで姉を抑える妹の逞しさに驚嘆するやら、自分の文字通りの力無さを痛感するやらで、仁ノ助は複雑な思いを抱く。
 「どうしても駄目かしら」との問いに、「二言は無い」と押し問答。それを後押しするように劉備が、そして義勇軍の面々が続く。

「曹操さん。あなたの要求は愛紗ちゃんの義姉として、そして義勇軍の将として了承できません。どうかお引き取りいただけないでしょうか」
「そうなのだ。いきなりそっちに行ってハイさよならなんて、鈴々は許さないのだ!会ったばかりの人間とすぐに仲良くなるのは鈴々でもできるけど、それとこれとは別の話なのだ!」
「口を挟むようで申し訳ありませんが、愛紗さんは私達にとって、鳳凰の片翼に等しい方です。あなた方の要求は断固拒否いたします。これは、私達の総意です」
「・・・との事だ。曹操殿、俺達は民の平和のために旗を上げたんだ。あなたの目指すであろう、武による乱世の平定とは相容れない」
「北郷、といったかしら。どうして私が武を目指すと?」
「その風格は覇者のものだ。唯一無二の理のみを信じ、それ以外を排斥する覇道の風格。だが覇道は俺達の王道とは似て非なる道だ。志が違う以上、同じ道を歩む事はできない。どうか今日は帰っていただきたい」

 面と向かって言う北郷の真剣さを吟味するように、曹操は片方の口端を上げた。頬の膨らみの中には、唾液に混じって凡人には及びもつかぬ壮大で、龍のような野心の炎が燻っているに違いなかった。ぐるぐると唸る勇猛な忠犬を他所に、逡巡を挟んで彼女は決断する。 

「今日の所は諦めましょう。でも覚えておきなさい。私は欲しいと思ったものを必ず手にする。それの使い方を誰よりも知っている者であるがゆえに。春蘭、秋蘭、仁ノ助」
『はっ!』
「本陣に帰ります。黄巾党を滅ぼすための、最後の準備をするために」

 そう言い残して曹操は最後に一つ、関羽に対する熱い笑みを残しながら天幕を去る。後に続いて夏候姉妹が去っていき、それに仁ノ助も続かんとした時、北郷に呼び止められた。

「すみません、仁ノ助さん」
「まだ名前で呼ばれる
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