暁 〜小説投稿サイト〜
真・恋姫†無双~現代若人の歩み、佇み~
第三章:蒼天は黄巾を平らげること その5
[12/13]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
ろで、彼女は勢いよく地を踏んで跳躍した。地面と垂直である城壁を彼女は何だと思っているのか、壁を二度蹴り登ると、続いて城壁の僅かな指一本ほどの隙間に足を掛けて、まるで野猿のように上部へ上部へと跳んでいく。新兵が唖然としたように彼女の勇姿を見上げていた。
 城壁の手摺までよじ登ると、彼女は腰に差した剣を一気に抜いて振るう。猛烈な勢いで迫ってきた女性に驚いた賊は、その表情のまま頚部を切断され、自分が落としてきた官軍の兵の元へと飛んでいった。返り血が自らに降りかかる前に、孫堅は二人目へと飛び掛る。横殴りに振るわれた剣は男の体を両断するに留まらず、その余波でさらに三人の兵を斬り飛ばした。当たりが良かったのか、真っ二つににされた男は躰が崩れないままであったが、恐怖に陥った仲間により倒されてしまい、そのまま意識を失ってしまった。
 孫堅は男の死体を飛び越えて、その後ろで固まっている賊兵達へと斬りこんでいく。一振りで幾つもの命を散らし、返す刀でさらに奪う。血飛沫が嵐のように飛んでいき、今度こそ彼女の体に返り血をつけた。さらに孫堅は今しがた斬りつけた男を力強い直刀蹴りで吹き飛ばすと、突っ込んでくる男の懐に入り込んで、入股座から左腹までを切り落とした。消失を感じた男は次いで強烈な痛みを覚え、絶望の表情を浮かべて自らが噴き出した血溜りへと沈んだ。

「母様、張り切りすぎよ?私の分がなくなっちゃうじゃない」

 遅れて城壁をよじ登って来た孫策ーーーこちらはしっかりと梯子を伝って来たようだーーーが、当たり前のように一気に三人の賊を切裂いた。今更言うまでもないが、いちどきに幾人もの人間を切り伏せるのはまともな業で出来る事では無い。この親娘が異常なまでに、膂力が高いからであった。
 体を半ばに切断された男達は、か細い断末魔をあげて後ろ向きに倒れる。発露する血の臭いに笑みを深めた娘の姿に、『自分の若い頃に似てきたな』と孫堅は嬉しいような、あるいは悲しいような微笑を浮かべた。だが瞬きをしたと思えばその笑みは消えて、彼女の愛剣、南海覇王が主の意のままに猛威を振るっていく。顎を深く切り上げられた男が絶叫を上げ、ようやく城壁を登攀した兵の槍を受けて声を無くした。
 二人の女修羅を先鋒として、次々と官軍の精鋭部隊が城壁を制圧していく。孫堅の兵だけでなく、朱儁から借り受けた精鋭も含まれており、その意気はかなりのものであった。優位が完全に覆されたと悟ると賊は恐怖の声をあげ、ある者は逃げ、ある者はやけくそとなって突っ込んでくる。無論それらは文字通り針の(むしろ)となって斃されていった。

(なんと斬り甲斐の無い奴等よ。こやつ等に比べれば、あの男の方が余程諦めが悪いぞ)

 自らを抱いた男を、孫堅は戦場で想う。彼は今頃、広宋にて賊の本軍と戦っているのだろう。その彼と寝台で再び合間見
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ