ルリム・シャイコースとの戦い T
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「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・・・・。」
万里谷祐理は体力がない。特に鍛えてもいない女性だから仕方がないかも知れないが、それでも兎に角体力がない。どのくらいないかと言えば、野球のバットを二回振っただけで息切れしてしまうほどに体力がない。
だが、恐らくこれは、強大な霊視の力を生まれ持つが故の弊害だろうと思われる。つい先日までのプリンセス・アリスは、彼女をはるかに超える力を生まれ持ったが故に、満足に歩けもしない体であった。
「もう・・・少し・・・・・・!」
だが、そんな彼女でも、やるときはやるものだ。火事場の馬鹿力とでも言えばいいのか?普段の彼女ならばとっくに力尽きて倒れている距離を、ノロノロとした挙動ながらも走り抜けてきた。
(多くの命を犠牲にして救われたこの命、決して無駄にはしません・・・!)
立ち止まることは許されない。極限状態で定敬の言葉に突き動かされる彼女は、懸命に足を動かした。こんなに寒いというのに、体からは汗が止めどなく吹き出て、呼吸は苦しく、足は鉛のように重い。
それでも、彼女は決して足を止めなかった。
(見えた・・・・・・)
境目が見えた彼女は、心底安心する。境目というのは、街の・・・という訳ではなく、権能の、という意味だ。
こちら側は一面白銀世界なのに対し、あちら側は通常のインドである。ある一定の場所から先には、ルリム・シャイコースの権能が届いていないのだ!
(あとは・・・都市に行けば、【聖魔王】様を呼ぶことが出来る・・・!!!)
ある程度大きい都市には、【伊織魔殺商会】と連絡を取ることが出来る魔術結社が存在することは、もはや世界の常識である。まぁ、これほど大きな事件なのだから、既に行動を起こしているかも知れないが、それでも彼女が見た、ルリム・シャイコースについての情報があるのとないのとでは雲泥の差だろう。
・・・とは言っても、アーグラから近い都市は、約180キロ北にデリー、220キロ西にジャイプル、300キロ東にラクナウがあるのみなので、途中でヒッチハイクなどをしなければなるまい。
ただ、詐欺やら人身売買の可能性が多分にあるので、頼む人間には気を付けないといけないのだが・・・そこは、彼女の持つ霊視の力に頼るしかないだろう。ある程度、人の本質を見ることに長けている為、そういったゴタゴタは回避出来る筈だ、と心に言い聞かせた。
「これで・・・・・・!」
境目に手を伸ばす彼女。・・・だが、クトゥルフの邪神がそんなに甘いわけがない。
”世界を滅ぼそうとしている”ような邪神の力が、たった一都市にしか及ばない訳が無かった。
ジュッ・・・!
「キャアアアアアアアアアア!?」
権能の境目から向こう側に伸ばした手。その指先が、境目から出
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