第二部
第三章 〜群雄割拠〜
百七 〜急転直下〜
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の皆さんにも真実をお話になるのですか?」
私が話し終えた後、月は一度深い溜息をついた。
それだけ、気を張っていたようだ。
「無論だ。特に交州から連れてきた者らには、徐州行きを強いる事は難しかろう」
「そうですね。そして、厳しい選択でもあります」
「……うむ」
「私はただ、皆さんと平穏に暮らしたいだけです。でも、戦わなければならない事もわかっています」
「そうだ。全てを捨てて野に下れば別だが、それもならぬであろう」
「はい。……でも、一つだけ私も譲れない事があります」
そう言って、月は顔を寄せてきた。
「何か?」
「私はお父様の娘。お父様の生きる道にどこまでもついていきます、それが戦場であっても」
「お前は戦いには向かぬ。それを承知の上でか?」
「勿論です。全てをお父様に背負わせもしません」
「……好きに致せ」
「ありがとうございます!」
漸く、月の顔に笑みが戻った。
そして、徳利を手にした。
「さ、お父様」
「私は良い。後は月が呑むと良い」
「いえ、今夜はお付き合い下さい」
あまり我を張らぬ月にしては珍しい事だ。
「こうして、ゆっくり呑めるのもいつになるかわかりませんから」
「……そうか。そうだな」
「でも、きっと遠くない日にまたこうして過ごしたいですね」
「うむ」
徐州に行けば平穏が得られる訳ではない。
だが、この一時は悪くないものだ。
「ところで月。そろそろ良いか?」
「え?」
「何、先ほどから席を共にしたいと待ち構えている者がいるのだが。霞、紫苑」
私の呼びかけに、気まずそうに姿を現す二人。
「なんや、気づいとったんか」
「申し訳ありません、お邪魔するつもりはなかったのですが」
と、月がくすっと笑った。
「構いませんよ。一緒にいただきましょう?」
「ええんか?」
「勿論ですよ。お父様のお許しがありますから」
「では、お言葉に甘えて。……星ちゃんに恨まれそうですけどね」
うむ、帰ったら存分に呑ませてやるとしよう。
今宵は、どうやら長くなりそうだな。
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