第二部
第三章 〜群雄割拠〜
百七 〜急転直下〜
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いが、私も付き従う者が居る以上は生き抜かねばならぬ。
それが天に背く所業であるんら、死して後に地獄の業火に焼かれるまでの事だ。
「お父様、お呼びですか?」
夜更けになり、宮中から戻った月が私の部屋に姿を見せた。
詠には明日でも構わぬと伝えておいたが、気になったのであろう。
「うむ。少し、呑まぬか?」
そう言って、私は徳利をかざした。
「珍しいですね。お父様からお酒のお誘いとは」
「たまには良いであろう。お前程強くはないが」
「ふふ、ではお付き合いします」
微笑んでから、月は私の隣に座った。
徳利を傾け、杯を満たす。
「では、乾杯」
「うむ」
かちりと杯を合わせ、口へと運ぶ。
磨き抜いた酒の旨みが、喉に染み渡る。
「あ、美味しいですね。これも、お父様の新作ですか?」
「そうだ。米一粒一粒を磨き、旨みのより強い部分だけを使った酒だ」
「贅沢な造りですが、それでは高くなりませんか?」
「その通りだ。それ故、まだ試作段階だがな」
この時代、食用以外に米を栽培する事自体常識外れであろうな。
そして、酒を生だけではなく火入れをする事により日持ちさせる。
酒は日持ちせぬのが当たり前の世界では、正に画期的だったらしい。
この事で既存の酒は廃れ、蘇双の酒ばかりが売れていると聞く。
当初はそれで醸造を営む者らが煽りを食らい、随分と怨嗟の声も上がったらしい。
だが、蘇双は私に許可を取った上で製法を公開するという思い切った事をした。
同じ原料で同じ製法を取れば、今までの酒よりもずっと利を得られるとあって醸造を営む者らは挙って造り始めた。
とは申せ、一朝一夕で質の良い物が出来る訳がない。
結果、似て非なる酒が大量に出回る事になるが売れるのは蘇双の商品ばかり……というのが現状だ。
尤も、飢饉が続いた上に先の戦乱で大量に米が消費されてしまい原料の確保もままならぬとの事。
それもあり、試験的にではあるが酒米の栽培を勧めておいた。
普及するまでは、まだまだ時を要するであろうな。
「それでお父様。お話とは何でしょうか?」
杯を干してから、月が私を見据えた。
「これからの事だ。だが、覚悟を決めて貰わねばならぬぞ?」
「私はお父様の娘です。お父様が正しいと思うなら、それに従うまでです」
「……いいだろう」
朱里の策、決して万人から評価されるものではなかろう。
少なくとも、劉ヨウに従う者らからすれば許容出来る筈もない。
だが、他に打つ手がないのも事実。
月に対し、綺麗事ばかりを並べ立てるつもりはない。
だが、月は真摯に私の話に聞き入っていた。
四半刻ばかり、語る事となった。
「お父様。兵
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