黒麒麟動く
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じとっとこちらを睨み、しかしそれでも責めているわけではないのが分かる。
「……まあいい。とりあえず誰を送るかだが……」
「私が直接行くわ。反論は受け付けないわよ?今後の為に必要な事だもの」
民の噂は権力者にとって一番の力にも毒にもなるのだから。
「……いいだろう。しかし思春を護衛につけて貰う。それと事が起こったなら黄巾の時の劉備軍への貸しは無しだな」
思春の護衛は構わない。むしろ願ったり叶ったりだと言える。
貸しはこっちが押し付けたのだからあちらも押し付けて終わり、という事か。
できればこの後に生かしたかったのだが仕方ない。
「了解。まあ起これば、だけどね」
「お前が言うとどこか確実に起こるように聞こえてくるから困るな」
苦笑しながらの言葉に私は舌を出して返し、少しだけ休息を取る事にした。
†
圧倒的な武力は虎牢関の時よりも尚、研ぎ澄まされていた。
公孫賛の所の趙雲と曹操軍の夏侯淵と許緒、孫策軍の黄蓋と劉備軍の張飛。そしてあたし。
六人でやっと抑えている。
夏侯淵と黄蓋の鋭い矢は的確に時機を見て撃ち込まれるも躱され、趙雲の鋭く速い槍撃は一筋も掠らず、張飛と許緒の重い攻撃を難なく受け止め、あたしの不規則な連撃を見事にいなしきる。
「ちびっこ! ちゃんと力込めてるの!?」
「うるさいのだ春巻き! お前の方こそ攻撃が軽いのだ!」
言い合いしながらも何故か息の合った連係を取って呂布に攻撃を仕掛ける二人。
ただ張飛は気合の入り方が許緒とは違う。きっと秋兄が一番傷ついていた事が影響してるんだろう。
「張コウ殿、某に合わせられますかな?」
息を少しだけ弾ませながらの趙雲の言葉に頷き答える。
「いいねぇ。やってみよっか。もう我慢しなくていいって夕に言われたしねー」
それでも倒すには足りなさそうだけど、とはさすがに言わない
「黄蓋殿」
「うむ。わしらが援護する。お主らは好きなようにやれい」
弓が主体の二人はあたし達の援護をしてくれるようだ。
付かず離れず放たれる矢の連携には、先ほどから危ない所を幾度となく助けられていた。
呂布は虎牢関の時とは違い本気なのか真剣そのモノ。
こちらは足止めが目的なので攻めているのも牽制の度合いが強い。それでも本気で殺しに行っているのだが。
方天画戟の寒気のするような攻撃は二人で防ぎ耐える。
動きが止まった瞬間に左右から放たれる矢に敵はうっとおしそうに飛びのいて躱し、その先に重い二つの攻撃が待つ。
受け止めた所にあたし達が攻撃を放ちまた飛びのく。
「……めんどくさい」
心底苛立たしげに呟かれた一言は本心からだろう。あたしだってこんな攻撃続けられたら心が折れる。
呂布を見つめ次の攻撃に警戒していたら戦場の空気が変わった。
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