第十章 イーヴァルディの勇者
第五話 動き出した歯車
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かな?」
「何だ?」
「エルフの部下だ」
ビダーシャルの顔が僅かに顰められる。
「……時間が掛かるが、何とかしよう」
「今欲しいのだ。お前がな」
「なっ」
口を開けた姿のままの固まるビダーシャル。
その姿ににやにやとした笑みを浮かべたジョゼフが指を突きつける。
「お前が、今、ここで決めろ。蛮人に従うのを良しとせず、断るのか。それとも世界を守るため余に仕えるかをな」
「……我の一存で決められるものでは……」
逡巡するように小さく顔を振るビダーシャルに、ジョゼフが声を荒げる。
「余は貴様が選べと言ったッ!!」
「ッッ!!」
ジョゼフの叱責に、微かに身体を震わせたビダーシャルは顔を俯かせる。数秒顔を伏せたビダーシャルは、顔を下げたまま膝を床に着けた。
「……仕えよう」
「ふんっ、出来るではないか……下がってネフテスに余が了承したことを伝えるが良い……貴様が余に仕えることも、な」
膝を着くビダーシャルにそう言い放ったジョゼフは、片手を振り退室を促す。だが、ビダーシャルは膝を着いたままの姿勢で動かない。
ぴくりとジョゼフの片眉が上がる。
「どうした?」
「一つお前に聞きたいことがある」
「構わん」
顔を上げたビダーシャルが、逡巡するように小さく口を数度開けたり閉じたりした後、ゆっくりと問いを口にした。
「お前は何を望んでいる? 会話をすれば、その人物がどんな人物であるか、何を望んでいるのか……大体は分かるものだ。だが、お前とどれだけ会話をしても、何もわからない……お前は……一体何なのだ?」
「余はガリア王国国王だ……だが余が何であるか決めるのはお前たちだ。我らにとって聖なる力である『虚無』をエルフが悪魔の力と呼ぶように、見る者によってそれが何であるかが決まる……お前は何だと思う?」
「……それがわからないから聞いたのだ」
ビダーシャルの苦しげに歪んだ口元から漏れた声に、ジョゼフは顔に浮かんだ笑みを濃くする。
「ふむ。お前の問いで、余にも一つ聞きたいことが出来た」
「何だ」
自分を見上げ僅かに身を引かせたビダーシャルの姿に、ふんっと鼻を鳴らしたジョゼフが口を開く。
「先程余は『我らにとっての聖なる力である『虚無』をエルフが悪魔の力と呼ぶように、見る者によってそれが何であるかが決まる』と言ったが、それが意思を持つ存在ならば、自らを名乗ることもあろう……余が余を『ガリア王国国王』と呼ぶようにな」
「何が言いたい?」
ジョゼフの言いたいことがわからず、困惑の色を露わにするビダーシャルに、ジョゼフは歪んだ笑みを向けた。
「貴様たちが言う『シャイターン』は、自分たちのことを何と呼んだ」
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