第十章 イーヴァルディの勇者
第五話 動き出した歯車
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ターン《悪魔》の門が今までになく活発に動きだし、蛮族が言う『場違いな工芸品』が現れる回数が増えている。このままでは、『シャイターン』が現れるかもしれない……ならば阻止するためどんな手段も取ろう、蛮人とも手を組もう……」
「では蛮人と手を組み、お前たちは余に何を望む?」
「近づかせるな」
肩を竦めるジョゼフに、ビダーシャルは短く伝えた。
「お前はハルケギニアで最大の王国の王と聞く、ならばその力で門に近づこうとする者たちを抑えて欲しい」
「それだけでいいのか?」
「そうだ」
頷くビダーシャルに、「ふむ」と顎鬚をなぞりながらジョゼフは頭上を見上げる。高い天井に視線を向けた後、顔を下ろすとビダーシャルと視線を合わせた。
「……そうか、『シャイターンの門』を開けるためには、四つの虚無が門の下まで行かなければならないのか」
「ッ!!」
ざわっ、と空気が騒ぎ、ビダーシャルが腰を僅かに落としジョゼフを睨み付ける。
その顔は、今までの無表情が嘘のように、憤怒と苛立ちに染まっていた。
「貴様……まさか」
「そう怖い顔をするなビダーシャル卿。ただの独り言だ」
「…………」
殺気を向けられながらも、泰然とした様子を崩さないジョゼフの姿に、ビダーシャルの顔が元の無表情に戻る。
「……貴様は何を考えている」
「何も考えておらんよ。貴殿も耳にしておろうが、余が周りからなんと呼ばれておるかぐらい」
「世間の評判と実際の人物の姿が一致しないことはままあることだ」
「そうか。では、お前は何だと思う?」
おどけて見せるように両手を広げるジョゼフの姿に、ビダーシャルの眉が険しく顰められる。
「否定はできんな」
暗に愚かと言われたジョゼフは、顔に笑みが張り付けたまま、広げた両手を上に向け、肩を竦めて見せる。
「まぁいい。ではお前たちと手を組んだ余には、どんな見返りがあるのだ?」
「『サハラ』における風石の採掘権及び各種の技術提供」
「ほぉ。中々気前が良いな」
船を空に浮かばせるために風石は欠かせないものだ。いくらあっても足りないほどであり、それが大量に眠っているエルフの土地から採掘出来るようになれば、それはどれだけ莫大な富を生み出すことになるか。それにエルフの技術力は、人間の技術力を遥かに超えている。それを得ることが出来れば、あらゆる面でガリアは他の国の先へと一歩も二歩も先へと進むことが出来る。
それがただ、シャイターンの門に近づこうとるする者に圧力を掛けるだけで手に入る。
破格では言い足りない程の条件であった。
だが、
「それもいいが、余には以前から欲しいものがあってな、それも頼んでもよろしい
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