第十章 イーヴァルディの勇者
第五話 動き出した歯車
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ガリア王国の首都リュティス。
ハルケギニアでも屈指の大国の首都に相応しき美しき街並みの中、一際目立つそれはヴェルサルテイル宮殿。
首都の華と歌われるその宮殿の中に、更に際立った美しさわもつ部屋があった。
王族の色とも言える青いレンガで建てられたグラン・トロワ。
その一室の中で、喜色が混じるガリア王ジョゼフの張りのあるバリトンが響きわたっていた。
「噂に聞いていたが、やはり大したものだなエルフというものはっ!」
ジョゼフは目の前に立つ客人―――エルフのビダーシャル卿に笑いかける。
「北花壇騎士団の中でも腕利きであったのだがな我が姪は……それを難なく捉えるとはな、これも先住魔法とやらの力か?」
ニヤリとした笑みを向けられたビダーシャルの視線が、床に転がされたタバサに向けられる。床に転がされたタバサは後ろ手に縄で縛られ、その目は硬く閉じられていた。ただの眠りではない。魔法、それもエルフの先住魔法による眠りであり、最低でも今日一日はどんな事をされたとしても目は覚めないだろう。
「お前の要求である裏切り者は捕らえた……交渉の権利を得たということでよろしいか?」
「ああ、いいだろうエルフ王の使者よ」
床に転がるタバサに視線を向けたままのビダーシャルに、ジョゼフは青い顎鬚に手をやりながら頷く。
「我らにお前たち蛮族のような王はいない。よってお前の言う『王の使者』という言葉は正確ではない」
「ふむ、王はいない、か、そう言えば『統領』であったか、しかし指導者を選ぶためとはいえ、いちいち入札を使うなど手間ではないのか?」
一国の王に対し随分と無礼な言葉を投げかけるビダーシャルに対し、ジョゼフは何ら痛痒を感じていないのか、口元に未だ笑みを浮かべたまま首を傾げてみせた。これには、ジョゼフの性質とガリア王国の特殊な立ち位置によるものが多い。ガリア王国はエルフとの国境を接していることから、エルフとの交流が盛んであり、その交流もお世辞にもいいものとは言えないため、良くも悪くもジョゼフはエルフからの蔑視にはなれていた。
顔を上げたビダーシャルは、ジョゼフに向けた目をスッと細める。
「我らは蛮族たちとは違い、血により指導者を選ぶ愚は早々に理解し、指導者を民の総意で選ぶようになった。我らが選んだ『統領』を貴様たち蛮族が『王』と呼ぶのは侮辱と知れ」
「ふん。ならば『ネフテス』のテュリューク統領の意を聞こうかな、ビダーシャル卿」
冷徹なビダーシャルの視線が刺さるも、ジョゼフの浮かべた笑みは崩れない。
「……我らが守りし『シャイターンの門』……お前たちには聖地と言えばわかりやすいか、その活動がここ最近活発になっている」
「ほう、聖地のことをエルフは『シャイターンの門』と呼ぶのか」
「そうだ
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