理想の先と彼の思惑
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なる。それと……今日はゆっくり寝ろよ?」
「うん。ありがとう秋斗さん」
本当に優しい人だ。私はこの人からもっと学ぶことがある。
自分の理想を確固たるものに出来た私は皆にどう話そうか考えながら自分の天幕に戻った。
桃香が去った後、握りしめすぎて手に持っていた酒瓶が乾いた音を立てて割れた。
近しい者が死にかけて初めて気付いただと?
行き場のない怒りが自分の心を焦がす。桃香の話を聞いている途中で感情を叩きつけそうになるのをひたすらに堪えていた。
自分の生きていた時代と違うのは分かっていたが今更価値観の違いに愕然とさせられた。
荒れ狂う心を鎮め思考に潜る。
桃香は思想家だ。本来なら乱世に立つべきではなかった。血に汚れてはいけなかったんだ。
その理想を人に説き、ただ広める存在でいるべきだった。庶人の心に根付いたそれは今の時代では大きな力と希望になっただろう。
だがなんのいたずらかこの世界ではそんな者が劉備になって義勇軍まで作っていた。後には引けない状況になっていた。
乱世において王が語るべきではないその理想を説いてしまっていた。
ならどうするか。
矛盾を飲ませて無理やり立たせるしかない。
選んだのは自分自身なのだから周りに責任転嫁してはいけない。
自分で消化して、自分で考えて、自分で悩んで初めて王としてその責を背負う事ができる。
笑われても、蔑まれても、憎まれても、怨まれても、自分と他者の哀しみを理解したそれを死ぬまで貫かせる事。
やっとあれはスタートラインに立った。
これでやっと理想を語る王としての覚悟を持てた。殺しという究極の理不尽を行っていく事の責任感を持たせられた。 王として確立されたと言える。
だが……桃香はまた自分の言っている事に気付いていない。
力を持って臨んだならそれは話し合いではなく交渉や脅しだ。言い方一つ違う言葉遊びだ。
結局、理想からは覚めきれず桃香はお綺麗なままか。
「度し難いな」
自嘲の気持ちが溢れ、誰に言うでもなく口から言葉が一つ零れ出た。
効率が悪い。本当に。
だが一番のクズは俺だ。乱世の結末を知っているくせに止めないのだから。
乱世を手っ取り早く終わらせることはできる。この戦の後桃香は出世するだろうから曹操に従わせればいい。そうすれば乱世は早く終えられるだろう。
正史の曹操ならお断りだがこの世界の曹操は黄巾の時に接触して、噂や行いでも分かったが統率者の理想像だった。虐殺など間違ってもしないだろう。
だが桃香は曹操には従わない。いや、従うことが出来ないというのが正しい。
桃香の理想とこれから曹操が行うであろう覇の道は水と油だ。
どちらも引く事が無いから必ず戦う事になる。
俺の目的は三国後の蜀の勝利にあ
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