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乱世の確率事象改変
理想の先と彼の思惑
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、矛盾に気付いていたし理想の穴も知っていた」
「じゃあどうして――」
「他人から言われた理想を掲げるつもりだったのか?」
 私がこの答えに行き着く事を信じてくれていたのか。
 私が自分で見つけなければ責任も何もない。誰でも掲げられるまがい物の理想に成り果ててしまう。
 だからこの人は私達に壁を作って気付くのを待っていてくれたんだ。自分の責任は自分で取れと強く教えてくれたのか。
「でも秋斗さん、あなたはそれを知っていてどうして私の代わりに立とうとしなかったんですか?」
 これが一番おかしい。私が辿り着く答えを知っていたならそれもできたはずだ。
「お前が見つけた理想はお前だけのモノ。俺にはそんな理想は考えつかなかったし、ただその先が見えただけだ。設計図を見て完成品を予想したってところだよ。これで設計図を描いたのは桃香で完成させたのも桃香自身だ。この尊い理想はもう桃香だけのモノだ。それと……よく苦しみながらも、悩みながらも自分で見つけられたな。やっぱり桃香はすごいよ」
 言われて私は初めてこの人の凄さを知った。優しく、厳しく、暖かい。雛里ちゃんが好きになるのもわかる。
「……私はまだまだあなたの上に立つには未熟です。それでも、私にこれからも力を貸してくれますか?」
 口を突いて出たのはそんな言葉。
「一つ聞いておきたい。力で奪っていく事も辞さないんだな?」
 返ってきた言葉は現実を突きつけるモノ。力がなければ守る事も話し合う事もできない。答えはすでに胸の内にある。
「必要なら力を行使します。守る為に。でも話し合いで解決できるならそうしたい。私には誰かと手を繋げる可能性を最初から否定する事は出来ないよ」
 これだけは譲れない。私の理想を叶えるのは力だけじゃないんだと証明したい。
「……今まで散々殺してきたくせにそれを言うのか?」
 自分の矛盾した答えに反論があがる。今まで殺して来た人達に言われるだろう。自分達は殺したくせに他は生かそうとするのか、と。
「向けられる恨みと憎しみを受ける事は私に与えられた責任です。矛盾を飲んで尚、私はその道を進みます。それに無駄な争いをしなくてもきっとわかってくれる人もいます」
 その言葉を聞き彼は月に高く杯を掲げてから飲み干し、少し笑って言葉を発した。
「……クク、桃香らしいな。なら今まで通り力を貸そう」
 きっといつかこの人の上に立つのに相応しい王になろう。
「ありがとう。これからもよろしくね、秋斗さん」
「ああ、よろしくな。桃香」
 そう言い合って新しい覚悟を胸に私は戻ろうとしたが背中越しに声を掛けられる。
「桃香、他の者に話すかどうかはお前が決めろ。ただ話すならお前は誰かから刃を向けられても文句は言えない。それを頭にいれて十分に考えてから話せ。説き伏せられたならお前の想いの証明に
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