理想の先と彼の思惑
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夜襲を受けた朝早くに袁紹軍が虎牢関を攻略したという報告が入った。
呂布率いる董卓軍は何故か関を放棄していたらしく攻略時に被害はなかったらしい。
袁紹軍は即座に馬超軍と公孫賛軍に追撃を呼びかけ二つの軍はその機動力を生かして呂布隊を追った。
連合は呂布隊の追撃に向かった馬超軍と公孫賛軍の帰りを虎牢関にて待っていた。
†
普段はあまり口にしないようなきつい味の酒を舌の上で転がし、コクリと静かに嚥下した。
一人で飲む酒は、やはり不味い。如何に夜天に輝く夜空が綺麗であろうと、俺には喧騒の中、もしくは誰かがいる空間でしか美味くは感じられないようだ。
今は共に杯を傾けられる星も白蓮もいない。愛紗は……気を使ってしまい誘う事が出来ない。
寂寥に心を鎮めながらも、それでも月を肴にただ酒を煽る。自身の心を少しでも誤魔化せるように。
今は誰もが眠る時間帯。空にある月はただにこやかに俺を笑うだけ。
ふいに人の気配がして後ろを振り返るとそこには桃香がいた。俯いているのと夜の暗さで彼女の表情までは確認出来なかった。
気にせずに警戒を解き話しかけてみる。
「よう、こんな時間まで起きてたのか。しかもこんなはずれに何しにきたんだ?」
陣のはずれの見晴らしのいい所に俺は一人座って酒を煽っていた。
俺の問いかけには応えずに、彼女は無言で隣に座る。
別に快活な返答は求めていなかったがさすがに無言で返されると寂しい気持ちになった。
「私は……わかってなかった」
数瞬の間を置いて突然放たれた独白。だがこちらも何が、とは聞くつもりはない。
「三人が死にかけて初めて怖くなったんだ。大切な人を失うっていうことが」
俺は無言で酒を煽り続きを待った。
無言の時間は不思議と心地いい。
聞いてみよう。見せて貰おうか。お前の成長を。
†
虎牢関の戦が終わった後、私はひとしきり泣き、絶望の淵に堕ちた。
明ける事が無いと思われた長い夜は無情にも光に包まれたが、それでも自分の罪は消えない。
次の日、軍に指示を出していたが朱里ちゃんと愛紗ちゃんに心配され、休んでいてくれと頼みこまれた。
天幕にいてもずっと眠れずにただ思考だけが巡り何度も叫び出しそうになったが無理やり抑え込み、しかしその間もずっと罪悪感と後悔が頭を支配していた。
人の声がまばらになり、気配が無くなり、また深く昏い夜が来た。気付くともうすでに夜遅くになっていたようだ。
誰かに会いたい、けど誰とも会いたくない。矛盾した想いが綯い交ぜになって心と思考を支配し始める。
結局一人でいることに耐えきれず、いてもたってもいられなくなって天幕の外に出た。
出た途端に皆はもう寝ている時間だと当たり前の事に気付き自嘲の笑みが零れる。
少し一人
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