人中のために音は鳴る
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もこの人と同じだと言う事に気付き、それが嬉しくなり笑いかける。
そうすると秋斗さんもふっと微笑み返してくれた。
「やっぱりお前には敵わないな。ありがとう、雛里」
今日この人は死の寸前を体感し、その手で殺してきた兵と自分を重ねた。その状況で生きる事が出来なかった兵達の想いをじかに感じ取ったんだ。
本当は生きていたかったのに理不尽に殺されてしまった兵。
私たちの自分勝手な理想や欲望の生贄になっていく人たちの気持ち。
黄巾の乱の時よりも身近に感じてしまうのも無理はない。自分が殺される間際になったことでより大きく実感してしまったのだから。
罪深さをより深く心に刻み、その想いを私にだけは伝えたかったのか。
本当は私にだって気持ちを漏らしたくなかったはず。いつも黙って耐えているのに溢れてしまったのは今回の感じた事の大きさを表している。
この人は、もう壊れているのかもしれない。いや、今も壊れて行く最中なんだろう。
一つ一つ確認して、心に刻んで進んで行く。あの時からずっと変わらない。
死んで逃げるなんて許されない。生きぬいて、救いきって、最後までやりきらないと終われない。
それがやらなければいけない事。想いを先の世に繋げるということ。
私もしなければいけない事。私もこの人と一緒にしたい事。
ただ……乱世の後にこの人には何が残ってるんだろう。もし――
『この軍じゃなかったなら皆でもっと分かり合えたし支え合えたかもしれない』
一瞬、陥った思考に凍りつく。
いけない。私は待つと決めた。この人と一緒に信じると決めたんだ。
桃香様はちゃんと気付いて変わってくれるだろうか。
気付くと秋斗さんは静かに眠っていた。
せめて夢の中でだけは幸せでいて欲しい。
「おやすみなさい、秋斗さん」
この人の鼓動をもう少し聴いていたくて、私は静かに目を閉じた。
†
「虎牢関から撤退しはじめている……ですって?」
「そう。多分朝には撤退完了してると思う」
虎牢関に向かわせた斥候からの報告をまだ朝が来ていないのに起きて椅子に座っていた本初に伝えた。
本初の大切なモノは二人の友達。
私の大切なモノが人質になっているのを知らない。
「……元皓さんに対応は任せますわ」
「ん、わかった」
そっけない返事を聞き出口に控えていた兵に指示を伝える。外で待っていた明が一つ頷いたのを確認して本初の前に戻った。
「本初、今は上層部の耳はいない。だから少し個人的に話をしたい」
「どの口で……っ! あなたが、あなた自身がその上層部のお目付け役ではないですか!」
激昂して私を睨みつけてきた。その眼に宿る憎悪は深く昏い。
「……今から話すことを信じる信じないはあなたに任せる」
「今更何を聞こうと信じま
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