人中のために音は鳴る
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がこの子の本来持つ優しさを呼び戻したのか。
それとも桂花への対抗心が再燃したか。
「ありがとう、明」
可愛らしく微笑む夕の頭をくしゃくしゃと撫でつけておいた。
まあ今はどちらでもいいか。あたしはただこの子を救うために動くだけなんだから。
†
虎牢関での夜襲は終わったが、連合はまた奇襲が来るかもしれない為、警戒はしっかりと行っていた。
私達劉備軍は兵の被害は軽微だが――
「秋斗さん……」
帰ってくるなりこの人は眠ってしまった。
軍医の診察では血を流し過ぎたのではないかとのこと。
皆心配して気にかけていたが愛紗ちゃんも鈴々ちゃんも怪我が多かったため桃香様と朱里ちゃんがそれぞれ介抱している。
「う……雛里……?」
「秋斗さん!? 大丈夫です……か……?」
つい大きな声が出てしまった。この人の体調も考えずに。すぐに声を小さく抑えた。
「……夜襲はどうなった?」
起き掛けに気にするのは自分の事より戦の事。将としての確認ならば軍師として答えなければ。
「……秋斗さんが倒れた後、敵軍師陳宮の火計により追撃で攻城戦を行った袁家両軍の被害が大きくなりました。ただ洛陽の兵数も計算にいれると相手もこちらもまだ五分五分の状況です」
「そうか……報告ありがとう。それと、心配かけてごめんな」
言うなり優しく頭を撫でてくれる。少しくすぐったいが暖かい気持ちになる。
この人は相変わらずだった。無事で本当に良かった。
副長さんからの話を聞いたが呂布さんとの戦いでかなり無茶をしていたらしい。
「無事でよかったです、本当に」
安心したらまた少し涙が零れてしまった。さっきまで散々泣いていたのに。
「ありがとう。いつもすまないな」
コクコクと頷いて掛け布越しの胸に耳を当てる。
この人の鼓動を聴いて生きてることをちゃんと感じるために。ドクンドクンと脈打つ心の臓の音は力強くその証明を私に伝えた。
無言で私の頭を撫でるその手はいつもの通り。しばらくそのままでいたら秋斗さんはゆっくりと話し始めた。
「なぁ雛里。……呂布は俺と同じだったよ。俺を殺しても、その想いを連れて行くって言ってくれた。その言葉で少し……救われちまった」
何故この人は自分が殺されていたかもしれない話をしてるのにこんなに穏やかに話せるんだろう。死んでもよかったように聞こえる。どうしてそんな悲しい事を言うんだろうか。
「でもな、殺される間際に生きたいって思っちまったよ。俺自身が生きて想いを繋げたいって。俺は欲張りだよなぁ」
続いて放たれた言葉は少年のように屈託のない声だった。こちらも正直に自分の気持ちを伝えることにする。
「私は、秋斗さんに生きていて欲しいです。そして私も一緒に想いを繋げたいです。欲張り同士ですね」
自分
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