ルリム・シャイコースの驚異
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降るかも分からないものである。いくら世界最高レベルといえど、不可能な事は存在する。彼女にそこまでを求めるのは、余りに酷というものであろう。
さて、全てが凍りついたこの世界で、何故彼女だけが無事なのか?
正確には、『無事』という訳ではないのである。
『ルリム・シャイコースは”イイーキルス”から白い光を放射し、世界を滅ぼそうとしている。
ルリム・シャイコースが発する光に照射された者は、白く氷結し、火で焼かれようともその氷は溶けず大理石のように白く輝いたままで、その周囲に北極の氷が発するような冷気を振り撒く。』
この文章にあるように、ルリム・シャイコースが発する白い光に触れると、決して溶けない氷像に変えられてしまう。これが、大多数の人間に起きた事象である。
が、この文章には続きがある。
『力のある魔道士だけを白い光に耐性を持たせては祭礼させる。この神は言葉巧みに魔道士を欺き、やがては生きたまま、その魂ごと喰ってしまう』
つまり、魔術や呪術の心得や才能がある者を、自分の餌として加工しているのだ。自分が喰べるに相応しい人間だけを、厳選しているのである。まるで、産地などに細かく拘わるグルメのように。
「定敬叔父さん・・・・・・。」
祐理は、自分を逃がすために自ら犠牲となった叔父さんの名を呟いた。もう、それに答える人間はいない。
ルリム・シャイコースは人を騙し、欺く神である。その為、まつろわぬ神と化したこの神は、催眠の権能も所持していた。
アーグラ全土を凍らせたルリム・シャイコースは、その催眠の権能を使用し、魔術的素養のある人間全てを集めた。数え切れない人間の中には、祐里と定敬も存在した。
『さぁ、食事の時間だ。』
バキバキ、ボリボリと音が響く。催眠の権能を手に入れたこの神は、クトゥルフ神話でのように『言葉巧みに操る』などという迂遠な方法を取らずとも良い。人を直接操れば、自ら口の中に飛び込ますことも可能なのだ。
ボリボリ、グシャグシャ。
その音は響くが、操られている人間はそのことを気にもしない。・・・ただ、数人を除いて。
(・・・祐里だけでも、逃がさねば!)
(・・・・・・・・・っ!!!)
優秀な術者であった定敬と、世界有数の感応能力を持つ祐里。その他に、なんと数人の魔人が、この中には混ざっていたのだ。
(お嬢さん、聞こえるかね?)
(!?)
人が生きたまま喰われる。そんな狂気の光景を見せられて放心していた祐里だったが、脳裏に響いたその言葉に飛び上がりかけた。・・・しかし、催眠に掛かっていないことを見破られればその瞬間殺される事は確実。何とか、声を上げるのを防いだのである。
(スマンね。儂は
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