ルリム・シャイコースの驚異
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元々白かったタージマハル廟だが、今は白銀に輝いている。極寒の冷気を発して、近づくもの全てを氷漬けにしようとしている。
彼女は、そんな場所の表広場で泣き続けていた。
「何で・・・どうしてですか・・・どうして・・・・・・。」
亜麻色の長髪がサラサラと風に揺れている。派手すぎない、落ち着いた色の赤と白の洋服とスカート。華美ではないが故に、彼女の元々の美しさを際立たせている。極寒の世界で崩れ落ち、泣き続けるその姿は、世界にただひとり残された姫君のようでもあった。
(・・・・・・誰も助からない・・・!)
泣きながらも、彼女の心の一部は冷静に状況を判断していた。そもそも、彼女が泣いているのは、なにも自分が死ぬから・・・ではない。
彼女を逃がすために、何人もの人間が犠牲となり・・・そして、その犠牲が全くの無駄となってしまったからであった。
彼女の名前は万里谷祐理。日本が誇る、世界最高レベルの霊視能力を持つ姫巫女である。
その力は、霊視に限ればあの『プリンセス・アリス』と互角とまで言われている、数百年に一人の才能を持つ逸材だ。
日本の鬼札の一人とも言える彼女が何故インドなどにいるのか?それは、家と昔から繋がりのある人物から、神具の鑑定を依頼されたからであった。
日本にカンピオーネが四人生まれたとき、日本の術師はこぞって海外へと逃げ出した。カンピオーネいるところに禍有り。まるでスタンド使い同士のように、強い力同士は引き合うものである。一人でも十分なのに、四人も同時にあの狭い島国に生まれた。それは、術師たちに長いあいだ住み着いていた祖国を捨てる決意をさせるには十二分な理由だったのだ。
彼女の親戚の叔父さんもその一人であった。
彼は日本を離れた後、インドに住み着いた。そして、いくつかの神具を発見していたのだ。
とはいえ、その神具ははっきり言えばガラクタだった。さして強い力を持つわけでもなく、歴史的な価値がある訳でもない。ただ、過去にヴォバン侯爵に連れ去られてから海外に潜在的な恐怖を抱いている彼女の心を癒すための口実であった。
『外国は怖いところじゃないよ』と、ただそれを言いたかっただけなのだ。
それを理解した両親は、彼女にインド行きを進めた。この春休みを利用して、息抜きでもしてきたらどうか、と。
そしてやってきたインド。鑑定など数分で終わらせてしまった彼女たちは、彼の案内によって様々な場所を巡った。このアーグラは、観光の最後に訪れた都市であった。
・・・そこで、この事件と遭遇してしまったのだ。
彼女がもし霊視をできていれば、こんな事件に巻き込まれなかったかも知れない。しかし、霊視というのはそう便利なものではない。いつ神託が
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