第43話 「遭遇」
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そうだ。実際に動かしてしまう。
向こうは動かしたくても、動かせないだろう。
準備はできても、動かせないのだ。
そこを突く。
「宜しいのですか?」
「ああ、出迎えてそれで終わりにする。その時同盟がまだ、艦隊を動員しているなら文句を言う。まあ、動きは止まるだろうがな」
皇太子の判断は正しい。確かにその通りだ。
それは素直に認めるべきだろう。
皇太子から学ぶべき点は多い。皇太子の動きを学ぶ。そうすればただの戦術バカにはなるまい。
俺も帝国の、いや政治的な戦争の仕方を学ぶべきだな。
■自由惑星同盟 作戦本部 アレックス・キャゼルヌ■
イゼルローンを挟んだ銀河の端と端で、にらみ合いが続いている。
あの皇太子の考えが知りたくて、ヤンを呼んだ。
「先輩」
「俺もいますよ」
「よお、よく来てくれた。おっアッテンボローも一緒か」
さっそくとばかりにヤンの奴に問いかけると、思わぬ返事が返ってきた。
「まず、あの皇太子は基本的に帝国宰相ではあっても、軍人ではないんです。武官ではなく文官ですよ。だから武断主義的な思考はしない」
「それって?」
俺だけでなく、アッテンボローも驚いているな。
「戦場で勝てばよかろうというタイプではないんです」
「なるほど」
「第一に考えている事は、帝国の改革でしょう。戦争など二の次三の次ですよ、きっと」
それはつまり、和平をも視野に入れて、考えているという事か?
「しかし、そう簡単に和平もできない」
「そういう事だ?」
「同盟と帝国の特性を掴んでいます。戦争が終わったあとの事を考えているのでしょう」
戦後を想定して、より有利になるように動いているか……。
レベロ議員やホワン議員が主張している事と一致しているな。
「あの二人は、皇太子の人となりから推測したのでしょうね。私もそうですが」
「あの皇太子、帝国をどうするつもりなのだろう」
「皇帝の重みを維持したまま、立憲君主制に移行するつもりでしょう」
立憲君主制か……。改めて聞くと凄い事だよな。
今までの様な専制主義とは異なるものにするつもりなのか。
それならば、同盟市民も拒否感は少ないだろうな。
特にあの皇太子だったら、あっさりと受け入れてしまう者も多いだろう。
「それで今の状況はどうなると思う?」
「あの皇太子、駐留艦隊を動かして、迎えに行かせるでしょう。そしてイゼルローンに戻って終わりです」
「うん? それで終わりですか?」
「ああ、アッテンボロー。それで終わらせるだろう。引っ張っても得はないからね。そしてその時まだ、同盟に動きがあれば、それを非難してくる」
「和平をするつもりがあるのか、ですか?」
「そうだろうな」
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