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皇太子殿下はご機嫌ななめ
第43話 「遭遇」
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が、駐留艦隊を動かしている。どういう事だ?

 ■自由惑星同盟 最高評議会 ロイヤル・サンフォード■

「ロボス君。帝国軍と遭遇したそうだが、どうすれば良いと思う?」
「引くべきでしょう」

 ロボス君の物言いは淡々としている。
 軍内でも主戦派の代表と言うべき男だが、シトレ君と同じように引けというか……。

「やはりそうかね」
「はい。シトレと同意見なのは、業腹ですが、今は時期が悪い。ここで帝国軍に勝利しても、同盟の方が不利になります。侵攻するなら十分な準備が必要でしょう」

 モニターの向こうにいるロボス君は、落ち着いている。
 私の方がおろおろとしているようだ。
 我ながら情けないな。
 しかし軍の重鎮の二人が引けというのだ。軍としては戦闘に入りたくないのだろう。
 それは政府も同じだ。
 和平の可能性が失われるかもしれん。

「では……」
「しかしハイネセンでも、艦隊の出撃準備をしておくべきです」

 では、引かせようと言おうとした私は、ロボス君の言葉に息を飲んだ。
 出撃の準備だと?

「そ、それは……どういう意図が?」
「あの皇太子にも、プレッシャーを与えるべきと申し上げております」
「プレッシャーか」
「このまま引くだけでは、主導権を皇太子に握られたままです。プレッシャーを与える事で、同盟が主導権を握る。そうするべきでしょう」

 主導権か、確かにあの皇太子が帝国宰相に就任していらい、主導権を握られっぱなしだ。
 ここで同盟側が主導権を奪う。
 やってみる価値はある。
 そんな事を考えながら、私は引き出しを開いて胃薬に視線を落とした。
 そして胃薬にするべきか、頭痛薬にするべきかしばし迷った。

「では……そうしてくれ」
「了解しました」

 有能だなロボス君は。シトレ君もそうだが、同盟軍は決して帝国に劣っていない。
 帝国と同じように、これからは軍を政治の手段として動かすべきだろう。
 無駄な戦争などする意味がない。

 ■宰相府 ラインハルト・フォン・ミューゼル■

「ハイネセンで、動きがあったか」
「はい」

 モニター越しに皇太子と元帥が話をしている。
 同盟側も大人しく引くかと思ったが、首都の方で動きがあったそうだ。
 俺にもこの事の意味は分かる。
 主導権争いだ。
 戦闘に勝利するだけが、戦争に勝つというわけではない。戦争というものは、その大半が戦場の外で決まるのだな。
 ここに来てからというもの、その事を思い知らされてばかりだ。

「ラインハルト様。ラインハルト様なら、どうなされますか」
「俺か、俺なら……」

 キルヒアイスに答えようとしたとき、皇太子が元帥に駐留艦隊に、遭遇した艦隊を迎えに行かせろと命じた。

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