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皇太子殿下はご機嫌ななめ
第43話 「遭遇」
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は入ったのか?」
「いえ、一定の距離を置いておるようです」
「そうか、こちらからは攻撃するな。イゼルローンまで、下がれといえ」
「宜しいのですか?」
「ああ。あえて、戦闘には入らず、引かせる。ただし」

 皇太子殿下の声にこわいものがこもった。
 この声を聞くたびに、身が震えそうになるわ。

「ただし?」
「同盟側が、引くならよし。その場からこちらに向かってくるようなら、駐留艦隊と協力して撃滅せよ。遠慮はいらぬ」

 部屋にいる者達が息を飲んだ。
 わしもだ。
 皇太子殿下は侵略の意志はないと、同盟側に伝えたそうじゃが、構わぬのだろうか?

「本当に宜しいのですか?」
「構わん」

 ミュッケンベルガー元帥が、確かめるように口を開いた。
 それを切って捨てるように、殿下が言い切る。

「こちらの様子を窺っているのか、試しているのかまでは分からん。だが試すような真似をした事を、後悔させてやろう。図に乗るなとは言っておいた。それでもなお調子に乗るなら、痛い目を見せてやる」
「了解いたしました」

 元帥が見事な敬礼をした。それを見届けた殿下が、通信を切る。
 怖いお方じゃ。

 ■自由惑星同盟 作戦本部 ジョアン・レベロ■

「シトレ。帝国軍と遭遇したというのは、本当なのかっ!!」
「本当だ」

 その知らせを聞いた私は、すぐさまシトレに連絡を取った。
 シトレの言葉に目の前が暗くなるようだ。
 あの皇太子はどう動く?

「戦闘には入ったのか?」
「いや、まだだ。それどころか、帝国側は後退を始めたそうだぞ。ゆっくりではあるがな。こちらを警戒しているのだろう」
「だろうな。それにしても引いてくれて良かった。戦闘に入っていたらどうなっていた事か」
「喜んでいる場合じゃない。イゼルローンに動きがあるのだ」

 イゼルローンに?
 どういう事だ。あの皇太子は侵略の意志はないと言ったぞ。適当な嘘を言うような男ではないと思ったが。
 私が考え込んでいると、シトレが恐ろしい事を言い出した。

「あの皇太子を甘く見るな。自分から攻撃を仕掛ける気はないだろうが、こちらの動きを見ている。事によれば、撃滅しにくるぞ」
「……つまり、どういう事だ?」
「引けば良し。引かないのであれば、こちらを叩きのめすつもりだろう。増援を送るべきか、軍内でも揉めはじめている」
「何を言っているんだ。引くべきだっ!!」

 思わず、激昂してしまった。

「引けば、それで済むという根拠はあるのか? 背中を見せた途端、追撃されるかもしれんのだ」
「帝国軍は引いたのだろう!」
「だがイゼルローンでは、駐留艦隊が動き出している」

 あの皇太子、いったい何を考えている?
 艦隊は引かせた。
 だ
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