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鉄槌と清風
15部分:14:良彦とヴィータ
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女、ゆっくりとだが、その差が縮まって。
 がしっと、良彦がヴィータを捕まえる…両手で、少女のわきの下からもちあげて。

 「ちょ、離せ、つか、あっついっ!」

 「なら、消去するって約束しろ、約束しないなら自爆をも辞さないぞ!」

 真っ赤になって暴れるヴィータ、しっかりと抱きしめている良彦。
 ザフィーラは居ないものの、いまだ蒸し暑い季節、このまま引っ付いているだけでもどちらも体力を奪われていく。

 「つか、女相手にこんなことすんな」

 「はぁ?…ちびっこあいてのまちがっいぃぃ!」

 振り上げられた少女の細い足が、振り下ろされ、人体の中でも難い部位である、踵が、良彦のひざに打ち下ろされる。
 痛さのあまりうずくまる良彦、抜け出すヴィータ。

 「良彦はいっつもそんな扱いだよな、あたしのこと!」

 「どういう意味か判らんけど、いまのは流石に痛いんだが、イヤ、普段、脛蹴られるのもいてーけど」

 「はっ、朴念仁には良いおしおきだっつーの」

 「いや、ごめん、意味判んねーから」

 「ったく、てめえは…はぁ、疲れたし喉渇いたから、アイス、トリプルな」

 「…は?」

 「良彦の驕りで」

 「なんでだ?」

 「はっ、てめえで考えろっつの」

 「む…判らないが、まぁいいか、俺も喉渇いたしな」

 「はぁ…この修行馬鹿が」

 何故か深い溜息をつくヴィータ。

 「んじゃいくか、いつものアイススタンドでいいよな?」

 「おう、バニラとチョコミントとオレンジな」

 「はいはい、つかトリプルとか腹一杯にならないのか?」

 「アイスは別腹だっつの」

 「それでよく腹痛くしてんのだれだっけ?」

 「うっせ、今日は大丈夫だよ、あんだけ走って暑いし、喉渇いてんだから」

 「ホントはそういう時はぬるいのとかのがいいんだけどな」

 「修行馬鹿+健康馬鹿か、お前は?」

 「いや、常識だろ…違うのか?」

 「多分あんまり知ってる奴はいねーんじゃねーか、良彦の年くらいだと」

 「…爺さんから何時もそういわれてたから、疑問にも思ってなかったな」

 とことこと並んで歩く様は、端から見ると微笑ましい兄妹か、それとも…。
 ともあれ、まだ暑い残暑の季節、アイスは冷たく美味しかったらしい。

 事件らしい事件もない、そんな話。
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まぁ、短めですが、二人の会話を…事件前なので、まったりとしています。

次回はそろそろA's開始の予定です。

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