〜幕間〜 月を守る者、月に照らされる者
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いつらが動いていたら処理をしてもらう」
捕らえようと動いたならこちらもやり返すだけだ。確実に動くのは分かりきっているが。
「……私は結局、守られる事しか、できないのかな」
しゃくりあげながら呟かれた独り言を聞いて罪悪感が押し寄せる。
本当なら涼州でゆっくり太守として国を守っているはずだったのに。
この状況になってしまったのは自分の責任だ。
予測が足りなくて、くだらない権力争いに巻き込ませてしまった。
あそこで平和を作っていたはずなのに。
「月、部屋で休もう? 移動までに少しでも」
ゆっくりと抱き上げて支えながら部屋に向かう。
せめて親友であり、大好きなこの子を守り切りたい。
そのために皆戦ってくれている。
自分には他に何が出来るのだろうか。
まだ五分五分のこの戦で。いや絶対になんとかしてみせる。
ごめん、ねね、霞、恋、そっちは任せたわよ。
ボクはここで出来る事をする。
華雄、ごめん。月だけは何があっても守ってみせるから。
†
シ水関から帰ってきた霞は悔しさと助けられなかった華雄への罪悪感で泣いていた。
ここは虎牢関執務室。他の兵は出払わせている。恋殿と自分しかいない。
「すまん……すまん、うちは……華雄を……」
聞いた情報なら仕方ない。むしろその時機で帰る決断をした霞は褒められてしかるべき。
自分達もその場に居れたなら無事だったかもしれない。
しかし後の祭り。失われた命は帰ってこない。
自分には掛ける言葉がなかった。
恋殿が動いて霞をゆっくりと、しかし力強く抱きしめる。
「……霞、守ろう。華雄の分まで」
うんうんと頷きながらもすまんと繰り返す。
月に忠誠を誓ってから驚くほど仲が良くなった彼女の気持ちは自分達では汲みきれない。
自分も後ろから霞に抱きつく。
涙が出てきた。
あの大きな、女のくせに男らしい笑い声が頭の中で反芻された。
きっと今の自分達を見たら彼女は笑いとばす。
いや、怒るかもしれない。
腑抜けどもめ、そんな体で月様が守れるか、と。
でも大切な友だった。
自分たちの涙が止まらないほど大事になった人だった。
せめて彼女の想いは繋げよう。
月を守る。
月の想いを守る。
そのために戦い、勝つ事が自分たちにできる彼女への弔い。
だから先に待っていてほしい。
いつか自分が死んだら、胸を張って守り切ったと言うから。
その時はいつもみたいに笑って迎えて。
それから数刻泣き続け、落ち着いた頃に三人でそれぞれの覚悟を胸にこれからの事を話し合った。
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