〜幕間〜 月を守る者、月に照らされる者
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た自分に、戦う意味をくれた。
そして敵にも同じような人がいると気付かせて、味方も守りたいものがあると教えてくれて、ちゃんと痛みを感じられる『人』にしてくれた。
もう自分は言われたままに戦う人形じゃない。
「だから泣かないで。月が泣くと、恋も悲しい」
頭をゆっくりと撫でると簡単に折れてしまいそうな少女は微笑んでくれた。
「私も、私にできる戦をします。どうかご無事で」
小さく頷き彼女を安心させて、自分はゆっくりと目を閉じこの幸せな時間を堪能することにした。
月は少しでも恋の痛みを和らげたくてこんなことを話してくれたんだろう。
この優しくて、強くて、暖かい少女だけは誰にも傷つけさせない。
†
洛陽にて、霞からの急ぎの伝令に報告を聞いた。
「華雄将軍、シ水関にて戦死されました。敵将は劉備軍が将、徐晃。将軍は敵からの余りに過ぎた暴言に怒り、董卓様の誇りを守る為にシ水関から討ってでられ、敵の分離策にはまりそのまま一騎打ちにて」
「張遼将軍は止めなかったの!?」
「それが……あのようなっ! あのような暴言には張遼将軍も耐えられずっ……本来なら一当てして、虎牢関まで引き三将軍で対応をするつもりだったのですが……っ!」
涙ながらに語る伝令は悔しさから拳を握りしめその先が紡げなかった。
「……わかったわ。報告ありがとう。あなたは下がって休んでいて」
これでこちらの敗色が少し濃くなった。
欲を優先する臆病な十常侍は動き出す。しばらくは抑えられるが持たないだろう。
華雄が死んだ。自分も悲しい。けど軍師としての思考が心よりも優先される。
「誰かある!」
「はっ」
「虎牢関に伝令。至急張遼将軍、帰還されたし」
早く呼んでおかないと月が捕らえられて生贄にされる。そのままこちらが勝ったとしても捕らえられている間にも言葉にするのも憚られるほどの辱めに合うだろう。それだけは避けなければ。
今はねねの状況判断を信頼するしかない。
霞と恋の二人とも帰って来て欲しいがそれでは勝ちの目が潰えてしまう。
自分なら奇襲をかける。戦の戦況を傾かせるような。
現場の状況はその場にいる軍師の判断に任せた方が的確なためこちらから口出しはできないが。
「詠ちゃん」
「月!? ……聞いてたのね」
「うん。華雄さんが……」
涙で言葉が続かず崩れ落ちてしまう。
「ごめん、月。ボクの力が足りないばかりに」
「……詠ちゃんの、せいじゃない。私の……」
そこで月の言葉は途切れて消えて行ってしまい、部屋に嗚咽だけが響く。
自分の不甲斐無さと、欲に塗れた獣達への憎悪に自然と拳が握られた。
「月、よく聞いて。まだ負けじゃないけどこれから十常侍が動き出す。捕まらないようあなたを安全な所に避難させるわ。霞が帰ってき次第そ
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