3部分:第三章
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たがそれだけだった。それで終わりだった。
海の方に出ると星達が夜の海の上にいた。眩い程だった。
「この星もな」
俺はまた呟いた。夢を掴んだのに悲しい気持ちだった。
霧の中の摩天楼も夜の星ももの悲しいだけだった。俺はそのまま自分の部屋に帰った。好きな酒もその時ばかりはまずかった。暗い気持ちのままだった。
それからどれだけ経っただろうか。俺達は相変わらずアメリカで歌っていた。もうその地位は確かなものだった。俺達は安定していた。けれどそれが急に崩れた。
「おい」
仲間で集まっていた時だった。俺は今聞いた話が信じられなかった。
「御前何嘘言ってるんだよ」
俺達は仲間うちじゃいつも日本語だった。この時もそうだった。
「嘘じゃないよ」
ドラムは小さな声で言った。
「この前病院行ったらさ」
小さい声のまま続けていた。
「俺、実はもう」
「馬鹿言うんじゃねえよ」
ギターがそれを聞いて言った。
「御前の歳でそんなことになるかよ」
「そうだ、俺達まだ若いんじゃないのか」
もうデビューしてかなりになるだ誰もはげちゃいないし髪の毛も白くなっていない。身体もほっそりしたものだ。これでおっさんとは誰にも言わせなかった。今度はリードヴォーカルが言った。
「そんなのになるかよ」
「俺だってそう思いたいよ」
ドラムはもう泣きそうな声だった。
「けれどさ、もう」
「何てこった」
ベースはそこまで聞いて大きく溜息をついた。
「仲間うちで一番若いってのによ」
「御前がそんなのになったら。俺達なんかどうなるんだよ」
今度は俺が言った。
「御前今度の新曲の作曲だったよな」
「うん」
ドラムは俺の言葉に頷いた。
「大丈夫なのか?」
「とりあえずはまだ」
「そうか、とりあえずはか」
「作曲、俺が替わろうか?」
サックスがここで話に入ってきた。仲間うちで一番無口なこいつが言うからには相当心配しているってことだ。
「そんな身体だったら御前」
「いや、やらせてくれよ」
だがドラムはそれにはこう答えた。
「どうせなら。最後までやりたいんだ」
「そうか」
「じゃあいいんだな」
「うん」
そしてもう一度頷いた。
「最後までドラムでいたいから」
「わかった、それだけの覚悟があるんならな」
俺はリーダーとしてこう言った。
「最後までやれ。いいな」
「うん」
「それでな」
そして次にキーボードを見た。こいつはずっとドラムと仲がよかった。
「御前何かと助けてやってくれよ」
「ああ、わかってるよ」
いつもひょうきんなキーボードもそれに頷いた。
「こっちで出来ることはするから。頼りにしてくれよ」
「有り難う」
「礼なんかいいんだよ、俺達は七人で一つなんだからな」
俺はまた
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