飛将軍来る
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モノがぶつかり合う音が間近に聞こえ、月明かりではっきりと見える空に人影が蝶のように舞っていく。
そうして抜けてきた影から殺気がそのままぶつけられた。
「斗詩!」
文醜が顔良の前に下から武器を振り上げ、重厚な金属同士の鳴る音が二つ聞こえた。
顔良も武器を構えどうにか堪える事が出来たようだ。文醜の咄嗟の判断がなければ真っ二つだったかもしれない。
あたしは少し止まった敵に向かって鎌を振りぬく。だが、赤い髪を二つ触覚のように立てた化け物はつまらなそうに最小の動作でそれを避けた。
続けて死角から鎌を振り切った反動で鎖分銅を投げつけるも、
「……無駄」
無感情で無慈悲なその声が聞こえたと思ったら片手で受け止められていた。
「でぇぇい!」
文醜と顔良の左右からの同時攻撃を行った。
対して呂布は片手に持った戟を音もなく振り、二つとも一度に弾いていた。弾かれた勢いで二人はもんどり打ちそうになったがどうにか立て直したようだ。
鎖分銅をつまらなさ気に地面に投げこちらを見やる呂布。改めてそのデタラメな武力を確認して逃げ出したくなる。
あたしは顔良と文醜と共に囲むように相手と距離を置いた。しかしこんな化け物相手に時間を稼げと言うのか。
「はじめましてー。あたしは張コウっていうんだ」
会話のできない獣じゃないと信じて名乗りを上げてみる。時間が少しでも稼げるようにと。
「……はじめまして?」
いきなり斬りかかって来たくせに一応名乗りはさせてくれるらしい。首を傾げて呂布から紡がれた一言にさっきまでとは打って変わって和やかな雰囲気になった。
でもやばい、この子可愛い。夕と並べてギュってしたい。
「あたいは文醜」
「顔良です」
口々に自己紹介し合うと、
「……呂奉先、よろしく」
何故か行儀よくぺこりとお辞儀をされた。
「一応聞くけど三体一でもいい?」
「……どうぞ。たくさんいても無駄。お前達じゃ恋には勝てない」
その通りだけどそれを言ったらダメだ。
「なんだとぉ!? あたい一人だって――」
「文ちゃんダメ!」
よく止めた顔良。さすがに洒落にならない状況なんだからイノシシはよくない。
「呂布、ありがと。じゃあちょっとあたしたちに付き合ってねー」
「……来い」
呂布は戦闘用に意識を切り替えたのか方天画戟を肩に担ぎ一言。それだけで辺り一面に死の気配が一気に溢れ出した。
頼むから早く来て。さすがにこんな化け物相手は無茶だ。
†
袁紹軍の陣の前に着くと同時に袁術軍の方へ行けと指示を出された。
呂布を止めろ、と。
三人共を呼んだのは夕の判断だろう。事の重大さは伝わった。
連合総大将の軍への単騎突撃。本来ならそんな無茶苦茶な事ができるわけがない。常軌を逸した存在がいない限りは。
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