飛将軍来る
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今は少しでも兵同士での被害を減らさなければ。もう一つ恐ろしいのはこの混乱も公瑾の予測の範疇という事。
確かに公瑾の言う通り、本気の混乱でなければあの女狐は騙せないだろう。
そのために犠牲になる兵の無念を想いながら。今は自分が出来る事を。
†
夕食後の蜂蜜水を美羽様に出し、ゆっくりした時間を堪能していると動きがあった。
「七乃、妾の陣の前の方が騒がしいのは何故じゃ?」
「そうですねぇ、敵さんが攻めて来たんじゃないでしょうかぁ」
「ななな! 大丈夫なのかえ!?」
手を口の前に持って行き、いかにも心の底から驚いて飛び上がった小さな主の姿に微笑みが零れる。
慌てる美羽様も可愛い。話してよかった。
「大丈夫ですよぉ。夕ちゃんと話し合ってあの三人を借りておきましたからねぇ」
対価は相応だったがなんとかなる。袁家上層部の目を誤魔化すのは骨が折れるが。
「……麗羽は嫌いじゃがあの三人と田豊は好きじゃ。無事帰って来てくれるのか?」
「あれらは守りに入ったほうが強いですからなんとか耐えるでしょう。それに田豊さんのことです。他にも対策をしているでしょう」
目を伏せ、呟いてから私に涙目で訴えかける美羽様に、兵の被害を気にしているのか利九ちゃんが苦虫を噛み潰した顔をして説明する。
「なら安心じゃの! そういえば孫策もおるし」
今思い出したのか。本当に孫策さんが苦手と見える。
「美羽様は安心してこの後陣のお馬さんの上で寛いでましょうねー。利九ちゃん、ちょっと」
そう言って小さな主を馬に担ぎ上げ、利九ちゃんを少し離れた所に連れ出す。
「七乃様……私は今回の策、納得できません。やはり私も――」
「あなた一人が出て行って何ができるんですか? せっかく孫策さんと袁家の目を欺く為に新兵だけで先陣を組んでいるのに」
立ち止まるとすぐに慌てた様子で口を開いた彼女の顔の前に人差し指を立てて言葉を遮り話す。
この子にはしっかりと言い聞かせないといけない。
「しかし――」
「美羽様は何も知らないまま、綺麗なままで暮らさせてあげたいでしょう? あんなに優しい子にこの乱世は耐えられないんですから」
「……分かって……おります」
「なら私たちが背負うしかないんです。例え何を犠牲にしても」
言うと彼女はギリと歯を噛みしめ口を噤んだ。
まだ甘い。せっかく有能なのにもったいない。何が大切で、何を守りたいか不確定なままではいつか食い殺される。
この子と私たちの不幸は袁家に関わった事。
対して幸運は、逃げ出せるだけのギリギリの能力と同士を得られた事。
「大丈夫ですよー。きっとなんとかしますから」
私の最大の幸運は美羽様に出会えた事。
愛しいあの子を守る為に私は何にでもなろう。
その先がたとえ自身の破
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