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銀河英雄伝説〜ラインハルトに負けません
第百六十五話 美味しい罠
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テレーゼを見て、リヒテンラーデ侯は言いようのない戦慄に包まれていた。当初フリードリヒ四世の覚醒はグリューネワルト伯爵夫人の影響かと考えていたのであるが、先年以来、この影の政府とも言うべき会議に出席を許され、其処で今まで韜晦していたテレーゼの真の姿であり正に鬼才と言える姿に触れてからと言うもの、侯は何度となく女帝として君臨し門閥貴族をバッサバッサと退治するテレーゼの姿を夢でみて飛び起きて家族を心配させていたが、今日ほどテレーゼの姿にルドルフ大帝の姿が重なって、寒気と震えが止まらなかった。

そんなリヒテンラーデ侯の恐れを知らぬ振りをしているのかテレーゼは更にとんでも無い話をし始めた。

「捕虜交換だけど、今回はイゼルローン要塞で行うわ」
「殿下、しかし其れでは、イゼルローンツヴァイや首飾りを連中に見られてしまいますぞ」
ケスラーが軍事上不味いと諫める。

「ケスラーの危惧も尤もだけど、堂々と見せる事の方が抑止力に繋がるのよ。嘗て、大日本帝国海軍は世界最大の戦艦大和を建造したけど、其れをひた隠しにして抑止力として使うことなく、戦争への道へひた走っていたのよ。其れを鑑みれば、同盟軍にイゼルローン要塞が2個に増えた上に、自分達の自慢しているアルテミスの首飾りのそっくりさんが遊弋していると知れば、よほどの阿呆以外は攻めようなんて考えないわよ」

「しかし、ツヴァイの完工は早くても486年前半と聞いておりますぞ」
「ああ、あれね、あれは嘘」
心配するリヒテンラーデ侯にテレーゼがあっけらかんと答えた。

「嘘とはいったい」
「敵を欺くにはまず味方からと言う訳よ。実際には11月にもツヴァイも首飾りも実働状態に入るわ」
「なんと、さすれば、同盟の連中が攻め来なくなれば、帝国の緩やかな改革も軌道に乗せる事が出来ます」

リヒテンラーデ侯が珍しく嬉しそうな顔をするが、其れをテレーゼは意地悪そうに希望を挫く。
「尤も、捕虜交換でツヴァイや首飾りを見た同盟軍がシャフトと黒狐経由で完工時期を知るでしょうから、難攻不落になる前にと、前倒しで無理な攻撃を仕掛ける可能性が出てくる訳なのよ」

「しかし、其れだけで、そう易々と敵が出てきますでしょうか?敵は捕虜交換により支持率UPをするわけですから、焦らないのではないでしょうか?」

「其処は其れ、確かに政府は支持率をUPさせるでしょうけど、負けっ続けの宇宙艦隊総司令部は焦るはずよ、“此からはイゼルローン要塞を攻め取る事が出来なくなる。迎撃するしかない受け身の戦術しかできない”とね」

「確かにそうなりましょうが、帝国本土を突かれることなく良い事では有りませんか?」
「確かに、普通ならそうよ、けどね私達にはフェザーンと地球教という害虫がいるのよ。その事を忘れては駄目よ。このままイゼルローン回廊
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