覇王の描く盤上に
[4/4]
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
とはいえ保険は掛けておきたいはず。
有力な将が防衛に当たっている内に董卓の身柄を拘束し、自身の保身を狙う輩が必ず出てくる。
董卓側はそれを抑え切れるならいいが主力がこちらにいるため筆頭軍師の賈駆は信頼の置ける者を戻さなければいけないと判断する。
知恵もある有力な将は張遼。しかしここで戻せば戦況は一気に敗色に染まる。
ならばどうするか。
ここで大きく戦況を動かしておき、尚且つ張遼を戻す。
そんなことが出来るのは奇策。手持ちの札から出来る事は限られてくる。
一つ、時間が無いが神速と天下無双ならば出来うることがある。
それは夜戦による奇襲。そして呂布に戦線を任せての洛陽までの後退。あの化け物がいるからこそこう来る。
軍師陳宮は呂布に常に追随しているからか思考が戦術寄りだとの報告が上がっている。長い目での戦略などは賈駆が担っていたのだろうが今は現場の判断が効かない。ならばもはやそれしか手段が残されていないと思考が縛られてしまうだろう。
これでこの戦の終わりへの道が見えた。読めている奇襲など恐ろしくはない。
張遼は洛陽でじっくりと捕らえると決めている。洛陽の民の被害も減らすためにも張遼には一時帰還をさせないといけないのだから。洛陽では本人を春蘭、兵を桂花に抑えさせて神速の張遼を丸ごと手に入れる。
今はこれ以上の被害を減らす事に専念すべきだ。手強い攻城戦の経験は手に入れたのだからもはや十分と言える。
それに――この後の乱世のため袁紹軍と袁術軍に少し被害を受けてもらいたい。
中軍には劉備軍の将達がいるから飛将軍自体は止められるだろうし、麗羽も生き残る事が出来るだろう。呂布は惜しい人材だがこちらで捕らえるとなるとさすがに被害が大きすぎる為、諦めるしかない。
さて、後は敵にこちらが気付いていない振りをさせないといけないか。
「夏侯淵隊に城攻めを夕方まで少し激しくするよう伝えよ。それと陣の柵の確認を念入りにさせておきなさい」
「御意に」
董卓には申し訳ないわね。董卓も時機が違えばもっと良い好敵手になりえただろうに。
少しの判断の違いで乱世の贄となる……か。
この乱世の終わりに果たして誰が立っているのか。
いや、私の目の前に立っているものは誰になるのだろうか。
願わくばより大きな乱世による、後の世のより大きな治世を。
ふと気付けば私の口角は上がっていた。
願わくば――この飢えた心にも充足を。
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ