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好き勝手に生きる!
第三十五話「実際にこの言葉を言うとは思わなかった」
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彼に向けている。


「なななんでここに化け物が!?」


 彼は混乱の極みに陥ってるようだった。


「ギォオオオオオオオオオ――――――ッッ!」


 再び、天を轟かすような咆哮を上げると、アヴェントヘイムの眼が輝き出した。


 キュインッ!


 瞳から放たれる閃光。


 一条の光が私の眼前を通り過ぎた。


「……は?」


 気の抜けた声。


 見れば、彼の腕が肩の付け根から切り落とされていた。


「ぼ、ぼぼぼ僕の腕が……腕がぁぁぁぁぁぁああああぁぁぁ!!」


 それだけではない。光の軌跡に合わせて深い傷跡が残っていた。


 ――山が二分するほどの。


「ギォォォォォオオオオオオオオオオオオオオンッッ!」


 恐怖からか、腰が抜けた様子の彼は震える体を鞭打って四つん這いで逃げようとする。


「いやだ! いやだぁぁぁ! 死にたくない、死にたくないよぉぉぉ!」


 しかし、アヴェントヘイムはその太い尻尾で彼を捕らえる。


「ヒィィィイイイイイイイ――――っ!」


 ベキベキベキ、と骨が砕ける鈍い音が聞こえる。さらには尻尾に巻きつけた彼を地面に叩きつけ始めた。


 ズガンッ、ともドガンッ、ともつかない音。それに合わせ、大地が揺らぐ。


 まるで玩具を手にした子供のような無邪気さを醸し出しながら、嬉々として彼を大地に叩きつける。


 そこらかしこにクレーターができ、彼の血が所々に飛び散っている。


「いはぃ……いはぃよぉぉ……」


 驚くことに、すでに虫の息だが彼はまだ存命だった。


 もはや以前の美形は見る影もなく、腫れ上がった顔で目も見えない。


「ままぁ……ぱぱぁ……!」


「グギュルァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!」


 彼を解放するアヴェントヘイム。


 刹那、彼を中心に魔方陣が展開された。


「ぐぶっ……」


 潰れたカエルのような声を漏らしながら地に這い蹲る。


 重力魔法だろうか。地面が陥没し出している。


「――――」


 彼の身体は瞬く間に地面へ埋没していき、あっという間もなくその姿を消した。


「グルゥゥゥゥゥ……」


 アヴェントヘイムの視線が私へ向かう。今度の標的は他ならない私なのだろう。


 死が迫るこの瞬間でも、私の心はまったく動かなかった。


 色の消えた世界で、私はただ黙然とアヴェントヘイムを見上げる。


 私の死を見つめる。


 ――ああ、ようやく……。


 不意にアヴェントヘイムが上空を見上げる。
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