第19話「惚れ薬」
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楓が窓から飛び降りる。
――だが、その時にはもう、タケルは地に降りて走り出している。
マナがスナイパーライフルを構えて、次の瞬間には発射していた。
「ちょ、マナ。それ大丈夫アルか!?」
「大和先生を捕まえるには本気を出せ。少しでも手を抜けば今のように逃げられるぞ」
口を開きながらも、次々と放たれる銃弾は速く、そして遠い。クーの目からは当たっているかどうかすらわからない。
「ちっ、さすがに速い」
「逃げられたアルか?」
「いや、今は楓が追跡中だ」
私達も追うぞ、とバッグを拾い上げ、窓から飛び降りてしまった。
一人部屋に残されたクー。
「……ここ、高いアルよ〜」
窓から顔を出し、常識的に呟いたのだった。
なんとか部屋からの脱出に成功したタケルだったが、すぐに背後から迫る追っ手と銃弾に、冷や汗をたらしていた。
マナの放った銃弾の数発が後頭部を直撃し、それは単なる銃弾ではなかったのか、確かな痛みを覚えた。かといって少しでも回避に移れば、後ろから迫ってきている楓に追いつかれてしまう。
――とりあえず、痛みは我慢して竜宮さんの射程から離れるしかないな。
呟き、さらに足に力を込めて走り出した。
こうして、タケルののんびりとしたはずの休日が殺伐と幕を開けた。
10分後
「いたでござるよ!」
「今度は逃がさないぞ、大和先生!」
「……ステルスを簡単に看破するな」
「あいや〜、出番がないアル」
30分後
「そろそろ諦めるでござるよ」
「逃げ道はない」
「さぁ、一手やるアル!」
「断固、拒否する!」
「……あっ!」
「壁ごと破壊して逃げるとは」
「相変わらずでたらめでござるな」
そして60分後
「……しまったアル」
「まさか街中に逃げられるとは」
「これではさすがに見つけられないでござる」
そして、それからさらに10分後。
彼女達は完全にタケルの姿を見失っていた。街中の人ごみに紛れられては、実力者の彼女達でも気配を察知することは出来そうにない。
約100分にも及んだ追いかけっこは、こうしてタケルの勝利という形で終わりを迎えた。
「……仕方ない、今日は諦めよう」
「うむ、仕方ないでござるな」
「ムムム……がっかりアル」
肩を落とす彼女達だったが、さすがにそのまま帰るのは虚しい、ということになったらしい。
「まさか、あれほど必死になって逃げるとは」
「拙者も少し予想外だったでござるよ」
呟きながらも、目の前に偶然あったSTARBOOKSカフェに入っていったのだった。
「ふぅ……終わった
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