彼は知らぬ間に求められる
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忙しいのにすまないな」
「構わない。それとごめん」
一応彼には明の仕事を押し付けた形になったので曖昧に謝っておく。
でも伝わるかな? 私たちのために利用した事。
「気にするな。持ちつ持たれつだろ。それくらいが丁度いいさ。では失礼した、田豊殿、張コウ殿」
にっと笑いかけ少し私の頭を撫でてから大仰に礼をして秋兄は天幕を出て行った。
撫でられて嫌な気はしないけどどうしてか頬が熱くなっていた。
「秋兄は……多分女たらしだね」
明の言葉にふるふると頭を振って気をしっかり持ち、私は明と共に袁紹と公孫賛の不毛な言い争いを止めに行くことにした。
†
「ちっ、あの女狐め。今度は何を企んでいる」
張勲を張っていた明命がまた張コウに邪魔されたとの報告を聞き、無意識に舌打ちが出て、勢いのまま毒づく。
本当に厄介な事だ。袁家に対しての諜報活動を行えるのは明命か思春くらいだというのに張コウが関わり出すと必ず失敗する。
「ろくでもない事な気がするー。冥琳、お酒ー」
「ダメだ雪蓮」
「うー。だって暇なんだもん」
椅子をふらふらと揺らしながら答え、まだ何があるか分からないのに酒を求めた雪蓮にぴしゃりと言うとむくれてしまった。
我が軍は袁紹軍と袁術軍の動きに邪魔されてシ水関では働けなかったが、まだ酒を飲んでいい時間帯では無い。
「はぁ……急な来客が来たらどうするの」
しかし自分で言ってはっとした。いつもなら構わず酒を飲んでいたはず。雪蓮がにやりと笑い、
「だから言うだけで飲んでないでしょ?」
得意げに語った。本当にこいつは――
「孫策様、周瑜様! 曹操様がお見えになられました!」
「……通せ」
雪蓮に少し説教をしようとしたら焦った伝令が駆けこんで来て来客の訪問を告げる。それを聞いて雪蓮がほらと言うように目を送ってきた。
何が目的なのか。シ水関で手柄を挙げれなかったのは曹操も同じ。だが奴の目的は各諸侯の力の見極めが最低限のはず。
兵力の無駄遣いをせず、最低の消費で実を取るためには私達に持ちかける話などないはずだ。
思考に潜っていると曹操とその部下が天幕にやって来た。
「急な押しかけで申し訳ないわね、孫策」
「構わないわ。だけどこっちも忙しいの、単刀直入にお願い」
よく言う。暇だ暇だと文句をいっていたくせに。
「……虎牢関での共同戦線の提案に来た。もちろん足手まといは抜きで」
凛とした声で告げた曹操の提案に少し面喰うも、雪蓮がすっと目を細めて言葉を放った。
「どうしてそうしたいのか詳しく聞かせて貰おうかしら?」
「お互いに実があるから、でいいでしょう?」
その程度分かるだろうという事か。そのまま重苦しい沈黙が場を包む。この場にいたのが雪蓮ではなく蓮華様なら呑まれていただろう。
確
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