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乱世の確率事象改変
彼は知らぬ間に求められる
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だ。周泰の諜報能力はずば抜けていて、七乃に言われていなかったら気付かなかっただろう。
「七乃にも同情する」
「だねー。ん?」
 二人で頷き合っていると明が軽く身構えた。天幕の外に誰か来たらしい。
「田豊様。劉備軍が将、徐公明様がお見えになっております」
「通して」
「はっ」
 天幕の外で短く返事をして兵は去っていき、彼が何の為にここに尋ねて来たのか予測を立てていると、一つ挨拶をしてから入ってきた。
「失礼する」
「どうしたの?」
「此度の戦、助かった。礼を言いに来たんだ。ありがとう」
 それは追加兵の事か、華雄討伐のことか、それとも別の何かか。何に対してかを考えていると隣で明が感心している。私も秋兄を見てみるとどこか戦前と雰囲気が違ったのが分かった。
「秋兄はそっちになるんだ」
「あいにく俺は不器用なんでね。それに割り切ったらそれこそあいつに呪い殺されるだろうよ」
 あいつ? よくわからない。明に後で教えて貰おう。
 明はそのままどこか羨ましそうな瞳で秋兄を見ている。これは私たちが無くしたモノを持ってる人を見る目だ。
「秋兄、それだけならここに来た理由にはならない」
 私が言うと秋兄は少し驚いていた。あまり見くびらないでほしい。
「……すまない夕。では単刀直入に。呂布の情報を貰いたい」
 そういう事か。劉備軍は未だ充実した情報網がないから噂に左右されやすい。敵の情報は多い方がいいのは戦の常であり、弱小である彼らなら命を左右するモノだ。
「見返り――」
「見返りはいらないよな? 明」
 涼しい顔で重ねてきて、私は少しこの人を舐めていたと考えを改める。
「……そうだねー。さすがにあからさま過ぎたか。だけどあんな事出来るなんてわかんなかったし」
 確かにあの奇策は華雄の意識まで引き付けた。あれがなければ袁紹軍の被害はもっと増えていたし秋兄が止めなければ華雄部隊には逃げられていた。それくらい厳しい状況だった。
「わかった。呂布の情報は教える」
 ある程度までだけど、と心の中で舌を出してそのまま彼の求める情報を話す。
「飛将軍は黄巾三万をたった一人で追い返したのは事実。武力は華雄、張遼が二人で戦っても歯が立たない。呂布部隊は突撃が主戦だけど質が異常。曹操軍でも抜かれると思う」
 呂布の強さを崇拝し、付き従うほぼ死兵のような部隊と聞く。さらに戦場で呂布とともに駆ける軍師陳宮が理性を繋ぎ化け物染みた強さを誇っている。
 情報を聞いた秋兄は難しい顔をしてまだ何か聞きたそうだったが諦めたようだった。
「ありがとう。軍師からそれだけ聞ければ十分だ」
 この人はどこまで予想をつけたのか聞いてみたい。でもそろそろ時間だから行かないといけないのでその考えを抑え付けた。
「じゃあおしまい。私と明はこれから用事がある」

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